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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

天涯のアルヴァリス1周年おめでとうございます短編「センセイとボク」

作者: セレンUK

本作は、strifeさん作の「天涯のアルヴァリス」

( https://ncode.syosetu.com/n7706ev/ )の二次創作です。

strifeさんの許可を得て掲載させていただいています。


時系列的には四十四話ごろのお話ですが、第六話 亡命先生・3あたりまで読んでからであればヒロインの魅力が伝わるかと思います。


 ボクの名前はノエル。

 グレイブ王国の王都グレイブに住んでいる13歳。

 うちは商人の家で、ボクも普段から家の手伝いで配達なんかをやってます。

 最近なんだか、軍人さんからの注文が増えてきてて、ボクも毎日のように工場に配達に行ってます。


 ある日、いつもどおり配達に行ったときに出会ってしまったんです。

 ごついおじさん達が集まっている中、まるで女神様のように綺麗な女の人に。


 遠くからでも分かる、何か神々しい感じの女神様。

 ごついおじさん達がみんな跪いてて、その前で女神様が何かをしゃべったら……そしたらおじさん達がばぁーっと散っていっちゃった。

 本当に女神様っていたんだ、って、その姿に見とれていたボク。


 おじさん達がいなくなった後、一人になった女神様がこっちを向いて……ボクと目が合ってしまった。


 ボクは何か悪いことをしてしまった気分になって、その場から逃げてしまいました。


 でもその日見た女神様の姿が忘れられなくて、気になって……。

 ボクと背の高さが同じくらいの女神様。


 後で聞いたんだけど、あの女神様は「センセイ」というお名前らしい。

 お仕事でりりょくかっちゅーっていうおっきな人形を作ってるんだって。


 その後も何度かセンセイの姿を見かけて、いや、ボクは配達に行く度にそのキラキラしたセンセイの姿を探していました。

 遠くからこっそりと眺めるだけだったけど、それだけでボクの胸は熱くなったのです。

 たぶんこれは恋。

 ボクはセンセイに恋してしまったようです。




 ある日のこと、ボクはいつものとおり工場に配達に行き、その帰りにセンセイの姿を探していた。


「んー、今日はいないなぁ……」


 ボクはうろうろと工場の中を歩き回る。

 ここの工場は結構広いんだけど、ボクはいろんなところに配達に行く必要があるため、ボクがこの中を歩いていてもみんな不思議には思わないんだ。


 センセイは女神的ですごく目立つので見つけるのは苦労しないんだけど、今日はまったく見つからない。


「どこかに出かけてるのかもしれないなぁ……」


 いくつかある建物をほぼほぼ探し終えてしまった。

 残念だけど今日はあきらめるしかないかな。


「オマエ、誰か探してるんデスか?」


 あきらめて帰ろうとしたとき、背後から突然話かけられ、ボクは心臓が止まるかと思うほどびっくりし、飛び上がった。

 バッと後ろを振り返ると、そこにはボクが会いたくて会いたくて仕方がなかった探し人、センセイの姿があった。


「あ、あの、いえ、その……」


 突然のことで声も出ない。

 頭の中もぐちゃぐちゃ。ようやく絞りだした言葉がそれだった。


「親方を探してるんデスか? 親方ならあっちにいるデス」


「い、いえその、探していたのはセンセイで、その、あの」


「私デスか? 呼びつけた記憶はないんデスが」


「あの、その、えっと、なんていうか……」


「あー、じれったいデスね、早く言いやがれデス!」


 あわわ、センセイに起こられてしまった、あわわわわ。


「そ、その、ボク、センセイのこと好きなんです!」


「……へ? ええーっ!?」


「……え、ええーっ!!!!???」


 ボクもつられて叫び声を上げた。


 ちょ、ちょっと待って、今、ボクなんて言った?

 確か、好きって言ったような!?


 センセイもすごく驚いてる顔になってる。


「いや、なんでオマエが驚いてやがるんデスか?」


 無し無し、今の無し。

 あまりにテンパってたので、無意識に口から出てしまった、今の無し。


「いやその、なんていうか、ボクはセンセイのことが好きなんですけど、それはまだ秘密というか、もっとこう素敵な場所で伝えたいというか……」


「何をブツブツ言ってるんデスか。

 まあ、私の魅力的なナイスバディの虜になるなんていうのは日常茶飯事のことで、愛の告白には事欠かないんデスが……。

 なにぶんオマエは女の子(・・・)じゃないデスか」


「!!」


 間違って伝えてしまったとはいえ、告白は告白に違いない。

 そして今センセイからの答えが、そう、答えが返ってきているわけで、この後の言葉は簡単に想像が付く。

 そう、ボクも知っている。

 この後は「おことわり」の言葉が続くのだ。


「……っ!!」


 話を聞き終わる前に、ボクはセンセイに背中を向けて……逃げ出した。


「うわっ!」


――ばしゃっ


 逃げ出すように急いで走り出したせいで、角から出てきた人に気がつかず、そのまま体当たりしてしまったのだ。

 そして、その人が手に持っていた液体を入れた容器が中を舞い、ボクと……センセイとに降り注いだ。


「うっへえ、ネバネバするデス」


「す、すみません、すみません」


 体当たりしてしまった男の人とセンセイに平謝りする液体まみれのボク。


「いや、見てなかった俺も悪かったよ。それよりも、その臭いが……」


 そう、この液体、すごく臭いのだ。

 ネバネバする上、臭いのだ。


「うっがー!、ネバネバの上に臭いデス!」


 お怒りのセンセイ。

 すみませんすみません。


「まあまあ先生、ここ数日風呂に入ってなかったでしょ。

 いい機会なんで風呂に入ったらいいと思いますよ。

 そっちの子も、そんな格好じゃ帰れないだろうから入っていきなよ」


 え、お風呂ですか?

 貸してもらえるんですか?


「確かに忙しくてしばらく入っていなかったデスが。

 まあ、日々のビューティフルボディの手入れは欠かせないから入るとするデス。

 オマエは軍属じゃないんデスが……しかたないデスね。

 一緒に来るといいデス」


 え、一緒に来いってことは……その、「おことわり」じゃなくOKなんですか?

 いや、センセイは女神様だからボクを傷つけないように、口に出さないのかもしれない……。


 わかった……こうなったらヤケです。

 お風呂でボクの想いを解ってもらいます!

 がんばれノエル、ここが正念場だよ!


「わかりました!

 じゃあさっそく、スグロンジナスカ酸トルミストール、取ってきますね!

 この液体、キサニウム化マルリンをきれいに流し落とすにはスグロンジナスカ酸トルミストールで反応させるのが一番です!」


「あ……ああ。スグロン()ジナスカ()酸トルミ()ストール()なら丁度ここに持ってる。

 貴重だから大事に使ってくれよ?」


 ・

 ・

 ・

 ・


「それで、何でオマエが私と一緒に風呂に入ってるんデスか?」


「それはもちろんベタベタを洗うためです」


 ボクは今センセイと一緒にお風呂に入っています。

 女の子同士だけど、ちょっと恥ずかしいです。

 でもノエル頑張る!


 ここは工場に隣接した建物に設置されたお風呂。

 工場の人はいろんな薬品を使うから、それを洗い流したりするために特別にお湯が出るように作られたお風呂らしいです。

 話に伝え聞く王様や貴族の入るような大浴場じゃなくて、2、3人が同時に入れるくらいの広さのお風呂。


 いつもはシャワーだけど、今日は湯船にお湯が張ってある日らしいです。

 つまり一番風呂をいただいてるんだけど、ベタベタのまま湯船につかるわけには行かないので……まずはシャワーとスグトルで洗い流すのです。


「それはわかってるんデスけど、聞きたいのはどうして二人一緒に入っているのかってことデスよ」


「もちろんスグトルで体を綺麗にするためです。

 貴重なスグトルです。

 二人別々に使う量はありませんから。

 さあセンセイ、頭洗いますよ」


「まあ理にはかなってるんデスけど、なんか釈然としないデスね」


 椅子に座って背中をこっちに向けるセンセイ。

 それでは綺麗にしますね。

 ボクは自分の手にスグトルをつけると、先生の流れるような金色の髪の毛に指を通し、丁寧に粘りを取っていく。


「はあぁ、なかなか気持ちいいデスね。

 人に洗ってもらうのもたまにはいいもんデス」


 どうやら喜んでもらえているようだ。

 丁寧に丁寧に。

 センセイの髪の毛を傷つけないように、絡まったりしないように指ですいていく。


「センセイ、一度お湯で流しますよ。目を瞑っててくださいね」


「私は子供じゃないデス! でも目は瞑るデスけどね」


 シャワーからお湯を出し、スグトルを洗い流していく。

 綺麗に流し終わった後、今度は石鹸でセンセイの頭を洗う。


「センセイ、かゆいところはないですか?」


「みぎみぎ、そう、そこデス。オマエいいウデしてるデス」


 そんなこんなでセンセイの頭を洗い終わりました。


「それじゃあセンセイ、次は体を洗いますよ」


「えっ!? 体は自分で洗うから、だから大丈夫デス!」


「遠慮しなくていいですよ、女の子同士じゃないですか」


「いや、女同士には違いないデスが、……アッ!、ちょ、ちょっと待つデス、やめ、やめ!」


 ・

 ・

 ・

 ・


 やりすぎました。

 センセイの体をシャワーで綺麗に洗い流すころには、センセイはぐったりとしてしまいました。


 そのまま湯船に入れては溺れてしまうかもしれないので、センセイのお風呂はここで終わり。

 きちんと体を拭いて、着替えさせておきました。


 ボクは裸のままセンセイの体を拭いていたんだけど、少し冷えてしまったのか、くしゅんとくしゃみが出てしまって。

 センセイには悪いけど少しだけ湯船に浸からせてもらいました。


 ほこほこになってお風呂を出たところ、センセイは目を覚ましていました。


「オマエ、なかなかやるじゃねーデスか。

 一つ聞きたいんデスが、さっき言ってた、私のことが好きとかどうとか」


「はい。さっきはびっくりして口からでてしまったけど……ボクがセンセイの事が好きというのは本当です。

 ボクは6人兄妹の末っ子で、5人の兄と、お父さんとで暮らしています。

 お母さんはボクが小さいときに死んでしまって……あまり覚えていません。

 もしかしたらセンセイにお母さんの姿を重ねてしまったのかもしれませんが、でも、センセイへの気持ちは間違いじゃないと思います!」


「そうデスか……。オマエ、名前はなんて言ったデスかね」


「あ、自己紹介がまだでしたね。ボクはノエルといいます」


「じゃあノエル。一つだけ言っておくと、オマエはまだ子供でまだまだ伸びしろがあるデス。

 だから自分を磨くデスよ。

 将来私が悲しんでいるときにパワーアップしたオマエが現れて、私がオマエにメロメロになることがあったら、考えてやってもいいデス」


「ほ、本当ですか!?」


「でも並大抵のパワーアップじゃ私をメロメロにはできないデスよ。それこそ姫騎士くらいにならないとダメデス」


 先生はニヒヒ、と笑顔でそう言いました。


 ・

 ・

 ・

 ・


 それから何日かして、センセイから一冊の本が届きました。

 どうやら、りりょくかっちゅーという人形を作るための話が書かれた本みたいです。

 

 本と一緒にメモが入っていました。


「オマエには才能があるデス。

 ネバネバをかぶったときにすぐにスグロンジナスカ酸トルミストールの名前を出したのには驚いたデス。

 これを読んで勉強して立派な研究者になるデスよ」


 すぐさまお礼を言いに工場に行ったけど、センセイは外国に行ってしまった後でした。


 ありがとうございますセンセイ。

 ボク、いつか立派になってセンセイを迎えに行きますから!



なるべく原作の雰囲気を壊さないように書きましたが、イメージが違う等思われましたらお許しください。

私の文章力の足りなさが原因です。


その場合は、原作をもう一度お読みいただき、生の「天涯のアルヴァリス」パワーを補充してください。


最後に、strifeさん「天涯のアルヴァリス」1周年おめでとうございます!

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