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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
八話:『纒 慎二』と潜入作業
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ルデースは右手に剣、左手に大きな斧を構えていた。

両手持ちの勇者は、先陣をきって戦っていた。勇者ルデースの姿を見て、兵士たちは士気を高めた。

兵士も剣を抜いて、狼頭に襲いかかる。

俺はサラの方を振り返り、すぐに彼女のそばに来ていた。


「マトイさん、これは……」

「お前は見るな、辛くなるぞ」大きな両手でサラの顔を覆う。

「なぜ、人は獣と戦うのですか?ステージ2なら、副作用なら治せるはずです」

「奴らは起こしてしまったのじゃ、安らかに眠っている者を起こせば機嫌が悪いのは当然じゃよ」

ハイクイが戦いを見ながら呟いた。俺はそれをじっと聞いていた。


「防備を固めよ、奴らは獣……」ルデースの声が響く。

兵士が一糸乱れずに動くが、獣の単体の強さが優っていた。


「これは、あんたが仕掛けたんじゃないのか?」

「いんや、わしはそのようなことはしておらぬ。しがないただの医者じゃからのぅ」

「だとしたらあの獣はなんで……」

「自ら薬を飲んだのじゃよ」

目を細めたまま、ハイクイはじっと見ていた。


「自らで薬を、そんなことがあり得るのですか?」

「わしらの思う以上に、国に、貴族に恨みを持つ者が多い。

わしはのう、息子にその薬を渡したのじゃ。サラが持ってきた薬を」

それを言われて、悲しそうな顔をするサラ。


「『ノクセント』のことですか?それに息子って……」

「わしの息子はソーリックという」ハイクイの息子がレジスタンスのボスか。

これでつながったな。この老婆も、レジスタンスの仲間ということだ。


「あの薬は試薬品じゃが、副作用が強いのは知っておろう」

「はい、ステージを一時的に4にします」

「じゃがステージ4は強い力を得る」

それは目の前で繰り広げられた戦いが消滅していた。

三人の狼頭相手に、次々と兵士たちが傷つき倒れていく。

一人奮戦するルデースも、かろうじて一人の狼頭を戦闘不能にしたが、三人に囲まれている。


「確かに人外の強さを得ます、爪も生えて、獣のようになります。知能は劣りますが」

「ただ、この副作用は副作用ではないのじゃ」

「どういうことですか?」

「ステージ4は従来、知能も獣化する。仲間以外は全てに襲いかかる。それしか判別出来なくなるからのぅ。

だが、この副作用の場合だと知能は獣化しない」

「だから敵を判別できる」

「そういうことじゃよ、同士討ちもしないで敵を確実に減らす。

アルバート博士は、試作品でとんでもない兵器を作り出したものじゃ」


ハイクイの言葉通り強さを見せた狼頭達、ルデースが獣の爪にかかって吹き飛ばされた。

手に持っていた斧と剣を手放し、ゴロゴロと床を転がる。

ルデースの着ていた黄色い鎧が、爪あとがあちこちに残って、血を口から出していた。

呼吸も乱れ、かろうじて生きている様子だ。

ルデースに対し、三人の狼頭は息の根を止めようと襲ってくる。だが、俺は動いた。


「何をする?」

「悪いが、一応俺にとってもこいつは知り合いでね」

息絶え絶えで、ほぼ戦えないルデースを俺は庇った。

ハイクイはそれを見ながら、首を横に振った。


「お主は貴族の味方をするのか?」

「いいや、貴族の味方ではない」それでも、俺の前に三人の狼頭。

俺の後ろではサラが、心配そうな顔を見せていた。


「やめておけ、そいつは王者だ」そう言うと、入口の方から声が聞こえた。

知能のある三人の狼頭が、その声に反応し狼頭の動きが止まる。

その後、奥から数人の人間が出てきた。無論中央には虎頭の男だ。


「ソーリックか?」

「ああ、君がまさか闘技場の王者が来るとは。自分としては、昨日会った時に気づいていれば良かったのだが」

「その言い方はやめろ」

「え、王者?」俺に対し、サラが驚いた顔を見せた。


「ええ、闘技場の王者。謎の獣の人間……旅の人間という話も聞いているが」

「まあ、間違っていない」俺を見ながら、虎頭のソーリックがやってきた。

ソーリックの存在感で、狼頭も素直に離れていく。


「君の戦力が欲しい、この戦いを終わらせるには君のような強さが必要だ」

「今度は俺の勧誘かよ、お前はこいつを勧誘したんだろ」そして、隣にいるサラを指さした。

大きなリュックを背負った小さな少女は、ソーリックと俺のやり取りをじっと見ていた。


「ああ、君も我がレジスタンスに参加してくれるかい?サラ・バリジャッド」

「私は、参加します」真剣な顔で、サラは答えた。

「そうか、それはよかった。君はどうするんだい?」

「俺はサラのボディガードだ。サラについていくと選びたいが、条件がある」

「ほう、何かな?」

「ルデースを解放してくれ」俺は迷わずそれを言った

ソーリックは困った顔で、俺をじっと見ていた。


「君は、この子の仲間か?」

「いや、ただの知り合いだ。だが、知り合いが死ぬのはイヤなだけだ」

俺の言葉に、ソーリックが首をかしげて俺を見ていた。

しばらくの沈黙のあと、口を開くソーリック。


「そうか、まあそうだろうね。わかった、彼女を解放しよう」

「助かる」そう言いながらソーリックは、ポケットから何やらタオルのようなものを取り出した。


「だが、こちらもひとつ条件をつけよう。君たちの目を隠させてもらうよ」

ソーリックがタオルのようなものを持ったまま、サラの背後に回っていた。

そのままサラの目を、タオルで隠してきた。



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