097
(??? EYES)
そこは広場にある磔台。俺は、いつもどおりに仕事をしていた。
アルカンテ王国の兵士である俺は、台に縛られた女を見ていた。
台に磔られているのは、中年の女。どこにでもいる主婦だ。
槍を持って鎧を来た俺は、槍先を女に向けた。
「税を隠していることはわかっている、税の未払はアルカンテでは重罪になる」
「あんたらの取立てが、ひどいではないのか?」
「国のために税を納めるのは、お前ら民の義務だ」
「その税を、貴族たちが自分らのために使っているじゃないか」
女が言うと、周りのギャラリーも騒ぎ出す。俺の周りにいる兵士も何人かいるが、数では及ばない。
「ならば払わぬというのか?」
「当然よ」
「愚か者め」槍の柄で俺は、女を叩く。
女は顔を歪めながらも、俺をじっと見下ろしていた。
「国は間違っている、人はいずれ反乱を起こす」
「そのようなことはさせない、我らアルカンテの兵士は国のために戦う」
そう言いながら、隣にいた兵士が火のついた松明を俺に手渡してきた。
俺は、無言で磔台の方に火をくべていく。
そして、磔台は火に包まれていた。女は、毅然とした態度で俺を見下ろしていた。
「お前たちは、国は間違っている」
最後までその言葉を、言い残し炎にその身を焦がしていた。
それを背後に、俺は演説をするのだ。
「税を払わぬもの、重罪に処す。
国の決めた法を必ず守るように……」
そう言いながらも、俺はどこか胸の中でやりきれない部分もあった。
だが、すぐに俺の隣にやってきたのは年配の兵士。
俺の上官でもある兵士が、うんうんと頷いていた。
「よくやった、それでこそアルカンテの兵士だ!」
「はっ」俺は上官に敬礼をする。
だがその上官の背後には、一人の人間が闇に紛れてこっちを見ていた。
はっきりとした殺気を放ちながら。
(MATOI’S EYES)
シアラは、勇者候補の一族だ。
レジスタンスのボスも言っていたが、勇者は貴族の人間と扱われていた。
一族の血を絶やさないように、勇者の剣を守り、家柄も保証していた。
当然、レジスタンスとは敵という間柄だ。
勇者が兵士を率いてこの病院に来たということは、完全な侵略行為だろう。
ハイクイはそれを知っているのか、黙ってシアラ……もとい勇者ルデースらを見ていた。
俺が声をかけたのを、無視するかのようにシアラが動く。
「何をしに来たのかな?」
「アルバート病院の搜査をしにきた。私は勇者ルデースよ」
「ほう、勇者とは貴族の犬に成り下がったようじゃな。嘆き悲しいことよ」
「あなたたちレジスタンスが起こした罪は重い。
大臣の屋敷の放火及び暗殺、貴族議員の襲撃及び暗殺。それらの罪は、極めて重要な罪になる」
「ここはただの私設病院じゃ。あなた方の思うレジスタンスの関係は、出てこないですじゃ」
「告発者もいる、早速調べさせてもらうわ。動いて」
勇者ルデースの指示を受けて、兵士たちは一斉に散らばった。
そんな中でも、ルデースはハイクイの前で立ったまま向き合っている。
「どういうことだ?これはなんだ?」俺は近づいて、再びルデースに声をかけた。
俺の声は聞こえているが、あえて無視を貫いているようだ。そのまま俺はルデースの真横に立つ。
「説明しろ、でないと《たたく》」
「いつから強引になったの、マトイは?」
「お前は初めから強引だったよな、俺やノニールと出会った時も」
「国の指示、あたしはそれに従って動くだけ」
ルデースは普段の、明るく気さくな女ではない。
仕事を淡々とこなす、キャリアウーマンのように変わっていた。
数分後、兵士が戻ってルデースに報告する。
「ルデース様、こちらに何もありません」
「こちらも、異常はありません」
「そう、じゃあ、次は二階を調べて。三階も、四階も」
「そこは、患者さんがいるんですよ」
サラが叫んで、ルデースに訴えた。だけどその訴えも届かない。
「しっかり調べなさい、ちゃんと」
「お嬢ちゃん、礼儀ができてないようじゃの」
静かに見守っていたハイクイが、ここで口を開いた。
それに反応して、ルデースが剣を抜いた。そのままハイクイの方にゆっくり歩み寄る。
「あんた、何か隠しているわね」
「隠しているとは聞き捨てならないねぇ。お主たちも財産を隠しているだろうに」
「それは違う!」
「何が違うという?正義の味方のふりをして、お主たちは弱者をいたぶっているだけではないか?」
「あたしたちは勇者として、邪悪な妖魔や獣と戦う義務がある」
「それが正義のやることかのぅ?」
「お前っ、あたしたちを侮辱するのか?」
「た、大変ですっ!ルデース様」
上の方から声が聞こえた、そして慌てた様子で兵士が階段から降りてきた。
ルデースは、すぐに階段から降りてきた兵士の方を振り返る。
「どうした?」
「け、獣が……うわあっ!」
「なんだと、やはりここは……兵士を全員上に向けろ!」
だが、ルデースの予測よりも早く頭が狼頭の獣たちが、一階の方に降りてきていた。




