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レティアとノニールの登場で、宿屋の一室前はさらに混沌としていた。
俺たちの前にいるソーリックは、表情が険しい。
姿を隠すこともしない虎男は、顔を二人に向けていた。
「お前は勇者か?」
「ええ、そうよ」レティアは剣を構えて、虎男を見ていた。
「貴族の味方をするつもりか?」
「あなたの意味がわからないけど、少なくともあたしの仲間を傷つけるならあなたの敵になるかしら」
「こいつは、ルデースではありません」
ソーリックに対し兵士が耳打ちをする。その声が、近くにいた俺にも聞こえた。
「なるほどな、つまりは旅の勇者か」
「そうよ」
「だったら、この街を出ることだ。もうすぐこの街をめぐって、本格的な戦いが起こるだろう」
「それは、あたしが決めることよ。あなたに指示されるつもりはないわ」
レティアは、あいかわらず憮然とした表情でソーリックを見ていた。
はっきり言って、威風堂々と見下すに近い。
だが、そのレティアの態度に観念したのか周りの兵士に手で合図するソーリック。
「邪魔したな、サラ殿。今回はここで引かせてもらう。
だが、本心が変わったらいつでも来てくれ。自分たちは貴女の加入を歓迎する。ゆくぞ」
「はっ」ソーリックと兵士たちは、ゆっくりとレティアとすれ違うように階段の方に降りていった。
レティアも剣を収めて、去りゆく兵士たちを眺めていた。
まもなくしてノニールとレティアと合流した。
「さっきのあいつらはなんなの?」
「レジスタンスです」サラの言葉に、レティアは首をひねっていた。
「それにしても、みんな無事でよかったっす」ノニールも笑顔で俺たちの部屋に入ってくる。
「ラオルはどうだった?」
「そうっすね、すぐ消えちゃったっすよ」
「とにかく、一度部屋で話すわよ。今起きていること、今後のこと」
険しい顔でレティアが最後に部屋に入り、そのドアを閉めていた。




