091
それは俺が見たことない獣だ。
だけど、一つだけはっきりしていることがある。
こいつは人間で、ステージ4ではないということだ。
「あんたは?」
「自分はソーリックという者だ。反乱軍を指揮する」
出てきていきなり危ない事を言う、この虎男。
反乱軍って、街の外でドンパチしている連中の首謀格か。
「そちらは何者だ?名を名乗らない方が不自然では」
「私はサラ、彼の名は『纏 慎二』。私の大切な仲間です」
奥に居るサラが、ゆっくり歩いてきた。それでも俺は、大きな体でサラを守るように立っていた。
隣の兵士が、ソーリックが何やら耳打ちをしている。
「獣の従者か?」
「彼は私の仲間です」サラは、それでも力強く言い放った。
「サラ殿、単刀直入に言う。あなたを我が反乱軍に来て欲しい。
我が反乱軍の医師として、是非とも君の力が必要だ」
「なぜ、私ですか?」
「ハイクイ・アルバーニを知っているか?」
サラはその名前を聞いて、強ばった顔に変わった。
俺も、どこかで聞いたことのある名前だ。
「委員長が?私のことを」
「ええ、ハイクイ医院長から推薦を頂いたのです。
サラ・バリジャッドは優秀な医者であると聞いております」
「私なんて、そんな……」
「我らレジスタンスは、現在国の横暴と戦っています。
貴族はわがまま放題、民は怒りが溜まっています。
そんな中で我らは立ち上がった、正義は我らにあります」
「戦いをするのに、適当な正義を語るのか?」
俺は単純に、その疑問を口にした。
「戦わねばならない、この国の政治は貴族のもので……完全に腐敗している。
高い税金に兵役、全ては金持ちである貴族を優遇するもので、貧しき者はよりひどい暮らしを強いられる。
彼らは私欲を肥やすために、平民どもの命をなんとも考えていない。
この街に、貴族はいらない。貴族こそ悪で、我らレジスタンスが正義だ」
「わかりやすい正当性だな」
「お前は、何も分かっていない!」憤るソーリック。
「た、大変です!」階段の方にいる兵士が、叫んだ。
「どうした?」廊下の方が、騒がしくソーリックが振り返る。
すると、階段からひとりの兵士がゆっくりと後ろ歩きで現れた。
その兵士は、怯えた顔で両手を挙げていた。
「あら、あたしの仲間に何をしているのかしら?」
そう言うと、階段の下から聴き慣れた声が聞こえた。
脅された兵士が、階段上の壁まで押し付けられる。
反対側にいたのは、剣を構えた女だ。
「レティア、無事か?」
「当たり前よ、あたしがそう簡単に負けるわけないじゃない」
剣を向けながら、ゆっくりと廊下を歩いたのは金ピカビキニ鎧のレティアだった。
すぐ後ろにノニールも、頭をヘコヘコ下げながらついてきた。




