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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
七話:『纒 慎二』とクーデター
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結局俺とサラがこの街で戻れる場所は、大通りの『黒鉄亭』だけだ。

病院から大通りまでは、それほど距離はない。

戻る道中に、幸い獣や小競り合いに遭遇することなく無事に宿屋に戻った。


無論、一階の酒場は臨時休業だ。

それでも客間のある四階には入れたので、俺たちは個室に戻る。

そして入ったのはサラの部屋。あいかわらず、机にランプが置かれていた。

窓の外には、内乱で上がっている煙がいくつも見えた。


「サラ……どうしたんだよ」

「ごめんなさい、私のせいです」落ち込んだ顔で、椅子に座っていた。

「何がだよ、俺はわからない」

「あの獣は、ステージ2です」

サラは突然、獣化病のステージを言い始めた。


「ステージ2?」

「はい、おそらく今街に現れている獣はステージ2、病院に入院していた人間です」

「ステージ2は確か……体に異変が起き始める」

「ええ、そうです」

「あの獣はガッツリ獣をしていたぜ、目も赤かったし」

「私がアルカンテに来た日、届け物をしたのを覚えていますか?」

「ああ、ここにはそもそも届け物をしたって」

「その届け物が、『ノクセント』の試作品でした」

サラの単語が、ラオルの単語に重なった。


「『ノクセント』ってなんだ?」

「ステージ2の症状を、下げる薬です」

「下げるのか」

「試作品ですが、アッサニー博士の研究がうまくいって……それを各病院で試験運用として配ることにしたのです」

「なるほど、でも、この話の流れだとサラの落ち度はどこにもない」

「ノクセントは、試作品で完全に完成していないので副作用があります」

「副作用……か。それは?」

「一時的に、ステージを上げてしてしまう薬です」

「それは困るな」

とにかくステージが進めば、獣により近づく。

俺はステージ3だが、その薬を飲めばステージ4になってしまうのだろうか。


「でもそれは、一時的なものだろ。どれぐらいなんだ?」

「薬の副作用は個人差があるものの、約三時間。

でも……あの薬は副作用さえも緩和できる薬があるの。

上手く処方すれば、副作用の効力を弱められるが、毒にもなるんですよ」

「まさか、処方を間違えて……」

「可能性はあります。急に獣化した理由が処方ミス……ならばいいのですが」

「まだ、あるのか?」

「いずれにしても、私がこの薬をこの病院に持ってこなければ……こんなことに」

「責めるなよ、悪いのはお前じゃないだろ」

俺は両手を肩にかけて、サラを励ました。

だけど、サラにしてみればショックなのだろう。

自分のしたことが、こんな要因を生んでしまったのだから。


「いいえ、それでも……」

「前にも言っただろ、自分を責めるな。

これはお前の善意を利用した、悪用したヤツが悪い」

「ありがとう、マトイさん……」

「ああ、俺に任せろ。それより、その処方した奴はあのラオルか?」

「それですが……ラオルは私もよくわからないのです」サラは困った顔を見せた。

サラの困った顔に、しばらく沈黙が俺との間に続いていた。



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