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黒いローブの人物は、気持ち悪いほどの白い肌の顔だ。
ほぼ全身が黒いローブで覆われている、気味の悪い人物。
ノニールも知っているようで、驚きはあまりなかった。
「おやおや、ラオルがここにいたっすか」
「お久しぶり、勇者の取り巻き魔法使い君」ラオルを不敵な顔で見ているノニール。
「やれやれ」俺は嫌そうな顔で、頭をかいていた。
「どうしてそんなに嫌な顔を見せるのか?獣の子」
「単純に、お前のその姿が嫌だからな」
「それは困ります、獣の子は我らに必要です。圧倒的なその強さが」
「本当にモテモテっすね」ノニールが茶化す。
「こんなのにモテたくはない」
俺はゆっくりとラオルの前に歩いていく。
「やはりあんたが黒幕か?」
「なんのことですかな?」
「ブリニッドに会った人物、薬を与えて決闘を邪魔した張本人」
「そうか?我は単に手伝っただけ」
ラオルは不敵な顔で、俺とノニールを見ていた。
「手伝った?ブリニッドか?」
「クライアントの名前を、簡単に言う人間は依頼主から信用はされないですから」
「まあ、確かにな」
喋りながらも、ラオルとの距離を俺はつめていく。
「それにしても残念でしたよ」
「残念?何が?」
「勇者の始末は愚か、剣を奪うこともできなかったわけですから」
「やはり、勇者の剣が目的か」
「ええ、残念です。しかも勇者を背後から抹殺する最後の奇策も、こうして不発でしたし」
ラオルが、両手を広げて首を横に振った。それと同時に、魔法を詠唱した。
腕の動きから雷の魔法を放つが、やはり強靭な俺の体に通用しない。
巨大な俺が、ノニールの壁になって立ちふさがっていた。
「言いたいことはそれだけか?」
「ええ、我はこれで終わりではありませんから」
「観念したようだな」
「『獣の子』の基地外的な強さに、正面から戦っては勝てないのは知っているので」
「ほう、そうか。じゃあ、遺言を承ろう」
「彼女の薬には助かった、礼を言う」
「薬?」一瞬眉をひそめたが、俺はすぐに右腕を振り上げた。
ラオルは狡猾だ。彼が言葉を吐いた後に、俺は頭の中からすぐにコマンド《たたく》を選択。
俺の右手の一撃で、軽く吹き飛ばされたラオル。
だけど、それも体が簡単に砕け散って、ねずみに分裂し、黒いローブを残して消えていった。
「ラオルって……やっぱり気持ち悪いっすね」
「全くだ」
足元を駆け抜けるねずみが、そのまま裏路地の何処へと消えていく。
そういえば、ラオルは二人の勇者を狙っているのか。
「一旦、二人のところに戻るか」
「そうっすね、あっ!」
「どうした?」
「あっちの方、家が燃えていないっすか?」
それは煙が上がっていた。煙が見えても火は見えないし、その煙の元もかなり遠くのようだ。
「火事か?」
「まあ、そうっすね。でもあっちの方は貴族街っすよ」
そう言いながらもノニールと一緒に、魔王の穴のそばにいる二人の勇者のところに戻っていた。
だがその煙はこれから起こることの狼煙だと、俺たちが知ったのは今から数分後だった。




