083
裏路地の二匹の獣は人型だ。
人間が獣化病で変わったステージ4の姿。
手には爪が生えていて、殺気を放ちながらフラフラとこっちに向かってくる。
足元はゆっくりだが、こちらの様子を伺っているのだろうか。
(全く、いいタイミングだ)
俺はゆっくりと歩いて近づく。
元々この巨体で走っても、そんなに早くないし、ちょっと疲れるからだ。
その間に二匹の獣が距離をとり、横に離れていく。
(襲っては来ないな、ずっと伺うつもりか?)
俺は二匹の位置を確認する。狭い裏路地を広く使って、俺の横につく気だろうか。
赤い目の獣が、じっと俺を見ていた。
(伺うというか……引き付けるつもり、むっ)
俺はさらにもう一人の獣の姿を感じた。
二人の獣のさらに後ろから来たのが、別の姿をした狼男。
やはり赤い目をしているが、そいつが走っていた。
走った先に居るのが、同じ狼男の獣。
だが、それを踏み台にして、俺の頭の上を飛び越えようとした。
(あ、越えようとする)俺は右腕を頭上に振り上げて、飛び越える獣を狙う。
しかし、その俺の腕をスルリとかわしていく。
「そういうことか」こいつらは直線的ではない。
頭の上を飛び越された俺は、振り返ろうとしてやめた。
俺の動きを見てか、裏路地に広がっていた二匹の獣が走って向かってきた。
「いい、頭脳プレーだ」
「そうっすね、忘れていたっすよ」俺の背後にはノニール。
風の刃が、俺を避けた獣を襲う。そのまま獣が地面に倒れていた。
ノニールが俺の後ろで杖を持って、怪しく笑っていた。
「今日はオフのはずなのに、たくさん魔法を使うっすね」
喋るノニールに、俺の後ろを飛び越えた獣が襲いかかる。
しかし、ノニールの魔法が完成し風の刃が襲っていく。
「ギャアアッ!」
「立ち入り禁止は、ちゃんと守らないといけないっすよ」
「ああ、全くだ」
そう言いながら、俺は襲ってくる二匹の獣を両手の拳で殴っていた。
頭の中で《たたく》を、二回実行して二匹の獣が地面に伏せていた。
俺は背後のノニールに振り返る。アロハシャツの魔法使いも、苦笑いをしながら俺の方に近づく。
「しかし、こんな治安のいいアルカンテにも獣がいるとは……やっぱりアイツっすか?」
「まあ、どこにでもこういうのはいるだろ。それに、この気配は……もう一匹ねずみが隠れているようだ」
俺はゆっくりと看板の方に向きなおした。
そこには、不敵な笑みを浮かべた黒いローブの男が立っていた。
怪しげな笑みを浮かべて、「正解」とつぶやいていた。




