082
シアラとレティアは剣を握っていた。
二人が真剣な顔で、大きく膨れ上がった穴を見ていた。
佇まいは、どこにでもいる普通の若い女ではない。
二人は、紛れもなく勇者の風格を放っていた。
「シアラ、準備はいい?」
「私は勇者ルデースよ、勇者レティア」
「ああ、そうだったわね。じゃあ、始めましょ。あたしの動きに合わせて」
勇者の先輩であるレティアが、前に出る。剣を構えて穴のほぼ前にやってきた。
大きく深呼吸したレティアの持っている剣が、目をつぶり瞑想。
そのままレティアの剣が青白く光っていく。
穴のそばで、レティアの隣に剣を構えて迷走する勇者ルデース。
同じように剣を斜めに構えると、青白く光っていく。
「異形なる魔の穴よ……」
「忌まわしき悪の穴よ……」
「この世界より消えよ、魔王の穴」
「存在することを認めぬ、魔王の穴」
二人の声が重なる後に、青白く光り輝く剣がバツの字のように交わった。
剣の交わりから青白い光の光線が、魔王の穴に次々と刺さっていく。
「これが『勇剣の儀』っすよ」
「『勇剣の儀』か……これがね」
「勇者が勇者の剣を持った時にしかできない、邪悪なるものを弱め、そして封じ込める儀式っす。
儀式の間は、集中しないといけないっすよ。
僕も二本での儀式は、始めて見るっすが……」
青白い光の線が、確実に穴の大きさを縮めていた。
「お見事ですわ、さすがですの」槍を持ったまま、マリアもじっと見ていた。
彼女の中にも、この青白い光は何かぼんやりと見ていた。
だけど俺は、後ろの方に何かを感じていた。それは俺らを観察するかのような視線だ。
「後ろの方に、誰かがいる」
「あ、マトイ君?どうしたっす?」
「ちょっと出かけてくる」俺は後ろを振り返り、裏路地を進む。
「ちょっと儀式は……どうするっすか?」
「その儀式を潰そうとしている奴らかも知れない」
進んだ裏路地の奥、立ち入り禁止の看板近くに気配を感じた。
それは、目玉のような妖魔ではない。
「獣か?この殺気」
「グルルッ」看板の裏から出てきたのは、二人の狼頭がこっちを見ていた。
当たり前のように、赤く光った目で殺気を放ちながら。




