081
翌日の夕方、俺は港町近くにある妖魔誕生スポットに来ていた。
裏路地は、この時間帯だとかなり薄暗い。
この日の参加は自由だ、とはいえ昨日の屋敷にいた人間が全員参加していた。
無論、俺も参加していた。立ち入り禁止の看板を抜けて、さらに奥に進む。
「マトイ君は、どうして来たっす?」隣を歩くノニールが聞く。
「勇者の剣ってのが、本当にすごいのかいろいろと見に来たくてな」
「おお、なるほどっすね」
つまりはただの野次馬だ。あれほど大掛かり戦いで、勇者を決めた。
その戦いに、巻き込まれる形で俺らは参加した。
戦いの賞品でもある『勇者の剣』が、どんなモノなのか見てみたいという興味が理由だ。
「そういえば、マリア」
「なんでしょうか?」隣を歩く、勇者候補ではなくなったツインテールの女に声をかけた。
相変わらず紋章の入った白い服を着て、その上に革の鎧という格好だ。
「ブリニッドは、目を覚ましたの?」
「はい、今朝起きました。尋問をしたのですが、薬品と金を受け取ったそうで……」
「どこで、誰に?」
「酒場に呼び出されて、黒いフードをかぶっていた人物だそうです。
名前は知らないそうで、そこから勇者の剣を手に入れるように依頼されました」
「どこの酒場かわかるかしら?」会話に口を挟んだのはレティアだ。
「貴族街にある酒場だそうですよ」
「その時間はわかるか?」
「一昨日の昼間すぎだそうです」マリアの言葉に、俺は考えていた。
黒いフードか、もしかしたら……頭の片隅に入れていおくことにした。
「それより、マトイ様」
「なんだ?」
「レティアさんとどんな関係ですの?」マリアが不意に俺に聞いてきた。
「ただの、仲間だ。利害も一致しているし」
「そうですか、パートナーではないのですのね」
「パートナー?」俺はマリアの言葉に首をひねった。
「そうですか、これからもコンレイ……いや勇者レティアをよろしくお願いしますわ」
「わかった」
「本当に、よろしくお願いしますわ」マリアが、俺に丁寧に頭を下げた。
「ここです、勇者様」クラーが道案内をし、レティアとシアラ(ルデース)を連れてきた。
「噂には聞いていたが、だいぶ大きくなったな」
シアラが腰に剣を携えて、大きな穴を見ていた。
この前見た穴より、さらに大きくなっているような気もする。
その周りを目玉が、ふわふわと浮いていた。目視できる数は四匹か。
「まずは、妖魔の駆除をしないといけないっすね」
「あ、服着てきた」俺は服を着ていた。あの目玉を殴ると、吹き出す紫の液で服が汚れる。
宿屋に帰った時に裸の俺を見て、サラががっかりするだろうな。
だけど、そこに二人の立候補者が現れた。
「この数なら、僕の魔法でイチコロっす!」
「私が盾となって勇者様をお守りしますの」
ノニールとマリアだ。杖を持っていたアロハシャツの魔法使いが前に出た。
凛々しくも気品があるマリアも、槍を両手に握っていた。
「二人とも、ではお願いできる?」シアラが声をかける。
「任せてくださいな!」マリアはすぐに槍を構えて突っ込んでいく。
ノニールは、すぐに魔法の詠唱を始めていた。
「おー、ありがたい」
「本当にありがたいと思っている?」レティアが俺のそばで、戦いを見ていた。
「ありがたい、というかあの目玉と戦うとサラの悲しげな視線が待っている未来が見える」
「そうなの?」レティアは、あまり気にしていないようだ。
まあ、その空気を呼んで二人が戦っているのか知らないが。
マリアの槍の突撃で、相手の目玉の動きが止まる。
食い止めているマリアの槍さばきが、目玉を食い止めていた。
「でも、本当にあんたには感謝しているわ。昨日の闘技場といい、立派に動いてくれるし」
「まだ終わっていない、お前の仕事はこれからだろ」
「うん、そうね。これが終わったらあたし……」
「どうした?」
「な、何でもないわよバカっ!」レティアがなぜか不機嫌になる中、前ではノニールの魔法が完成した。
そして、マリアが離れると、「これでも喰らえっす、『ガストナイフ』っ!」
ノニールが発生させた風の刃をまとった渦が、マリアの横をすり抜けて目玉の方に向かっていく。
そのまま目玉を綺麗にスライスさせて、次々と輪切り状態にしていった。
地面に紫の液体を撒き散らして、四匹の目玉は動かなくなった。
ノニールの後ろでは、ツインテールのマリアが槍を構えた。
グルグルと回して、両手でしっかり握ったマリア。
「あとは、こっちで焼いておきますので。二人共」
「うん」シンクロした返事のシアラとレティア。
そのまま、剣を握って穴の方へと向かっていった。




