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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
六話:『纒 慎二』とデュエル
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078

ブリニッドはレティアの登場を、じっと見ていた。

レティアの登場で闘技場の空気が、再び歓声に変わっていた。

俺の前のレティア、勇者で堂々とした佇まいに観客は安心したのだろう。

それでも、ブリニッドは俺を意識しているようにも見えた。


「ほう、勇者か。小賢しいことを」

「マトイ、あたしも手助けするわ」

「大丈夫か?」俺の言葉に、レティアは険しい顔でブリニッドを見ていた。

ブリニッドは普通ではない、鎧を着た狼男だ。しかも右手に剣を持っている。

左腕を自慢げに見せつけながら、怪しく笑うブリニッド。


「勇者はこの都市に不要だ、弱者の敵になる勇者なぞ……グルルッ」

「お前が言うと全然説得力がないな」俺は相変わらず、細い目でブリニッドを見ていた。

「ぬかせっ!」

ブリニッドが狼の脚力を活かして攻撃をしてきた。

飛ぶスピードも、跳躍力も人間を超えていた。

鉄の鎧を着ているのに、動きが明らかに早い。


「来るわね」レティアが剣を構えて、ブリニッドに斬りかかる。

レティアの動きも、だいぶ早い。身軽な装備は、ブリニッドに負けていない。

それと同時に、レティアの剣が赤く光っていた。


「魔法もかよ」レティアの口元が動いていた。

ブリニッドの動きに、果敢に向かうレティア。


「灼熱の炎よ、剣に力をっ!『フレアソード』っ!」

赤くなった勇者の剣が、炎を纏う。そのまま向かってくるブリニッドに斬りかかる。

しかし、ブリニッドはレティアの剣を右手の剣で受け止めた。


「ううっ!」そのまま動きながらレティアの剣を、力でなぎ払う。

弾かれたレティアが、バックステップで着地した。

ブリニッドはレティアではなく、俺の方に走ってきた。


「死ねえっ!」ブリニッドが、俺に爪でひっかいた。

巨漢の俺は、避けようとしても間に合わない。

狼の爪が、俺の腹を引き裂いた。だが、俺は表情を一つ変えない。


「なんだと……グルルッ」恐怖にも似た顔をブリニッドが見せた。

俺は頭の中でコマンドを選択した。《たたく》だ。

だが、ブリニッドも狼の体だ。俺の攻撃に反応して、すぐに後ろに下がった。


「どうやら理性と本能、双方があるらしいな」腹をパンパンと叩く。頑丈な俺はダメージが全くない。

その姿に、倒れているマリアもシアラも驚いていた。

「動きは鈍いのに、頭は鋭いな」

「それは褒め言葉?」

「食えない男だ」ブリニッドは、再び爪を構えた。

炎が消えた勇者の剣を持ったレティアは、俺の方に合流した。


「動きが早いし、力もあるわ」

「そうだな」

「あんたの攻撃も当たらないじゃない」

「そうだな」

「返事が投げやりすぎるわよ、マトイっ!」

俺とレティアが声をかわす最中に、ブリニッドは向かってきた。

今度は剣を構え、俺のほうに向かっていく。

人間よりも速い動きで、人間の理性。動きとしては捉えにくい。

近づくブリニッドに再び、俺の《たたく》が空を切った。


「ねえ、あんたの一撃が当たれば倒せる?」

「多分な」

「そう、だったらあんたの一撃が当たるようにしてあげる」

レティアが、剣を構えて獣化したブリニッドを睨む。ブリニッドはこちらに向かって走っていた。


「貰った!」剣でブリニッドが、俺の脇腹を切りつけようと振り上げた。

しかし、ブリニッドが突然足元のバランスを崩した。

驚いた顔でブリニッドの大振り剣が、俺の脇腹を掠めていく。


「なにっ!」

「あたしを忘れるんじゃないわよ、ブリニッドっ!」

レティアが、ブリニッドにスライディングキックだ。

彼女の身軽な跳躍力で、思い切り鎧の足あてを蹴りつけていた。

スライディングで滑ったブリニッドは、それでも前に体重を移動させて踏みとどまった。


「小娘っ!」ブリニッドが、体をひねって左腕の爪を後ろにいたレティアに落とす。

しかし、レティアはすぐさま後ろにジャンプして回避した。

腰を屈んで、華麗に着地した。剣を構えて、すぐ俺のそばに来ていた。


「マトイっ!」

「なんだ?」

「あんた、あまり感情を出さないのね」

「感情を出して戦うのは、頭が悪い奴だ」

レティアは俺の空気の読めない言葉に、怒ると思った。だが、レティアは表情を変えない。

「ちょっと背中を借りるわ」レティアがそう言いながら、俺の背後に隠れた。

俺は前を見ると、ブリニッドが剣を構えて向かって走っていた。


剣を構えて爪を光らせて向かってくるブリニッドに、俺の鈍感な足では逃げきれない。

ならば頭の中でコマンドを指定。《たたく》を選択。

俺の右腕が、なめらかに動いていた。ブリニッドを迎え撃つ。


「死ねやっ!」

ブリニッドが剣を構えて、俺を切りつけた。

そのまま剣を振り下ろして、俺の腹が切られた。

が、それもあまり効いていない。出っ張った腹が、ボヨンと剣を返していた。


「なんだと」おののくブリニッド。それでも俺の右手の動きを感じた。

俺の右手に反応して、後ろに飛ぶ。

しかし、それが後ろの彼女の狙いだった。


「かかったわね!『フレアソード』っ!」俺の大きな背中が、蹴られた。

いや、俺の大きな体を踏み台にしてレティアが、ジャンプしていた。

後ろに飛んだブリニッドに、剣を持ったレティアが斬りかかっていた。

炎を纏わせた剣を両手に握って、レティアの上からの一撃がブリニッドの右肩から切り裂く。


「グアアアッ!」右手に持つ剣を落とし、片膝をついたブリニッド。

だが、左の手には爪が生えていた。

「今よ、マトイっ!」

「ああ」俺はそれでも動こうとするブリニッドに対し、再び《たたく》を選択した。

俺の右腕を、今度はかわすことなくそのまま命中。

獣の戦士の体を、大きく吹き飛ばしていた。

ブリニッドの体は、あっという間にマリアの近くの壁にぶつかって倒れた。

その光景を見て、観客は驚いた顔で固まってしまう。


「あっ、人が見ていたんだ」

だが、数秒の静寂の中「わああっー!」と地鳴りのような歓声が上がっていた。

聞こえる声は全て、俺とレティアを称える大歓声に変わっていた。



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