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審判の声だろうか。マイクのようなもので喋った声が、この控え室にも聞こえた。
聞こえた瞬間に、周りが一気に沸き返っていた。
離れた控え室でも、しっかりと舞台の歓声が聞こえるようだ。
外の大歓声を聞いて、観客席の下にある控え室が揺れているような錯覚になった。
手足を縛った縄を俺が引きちぎる。
そばに置いてあった杖を回収したノニールは、青ざめた顔で俺に言ってきた。
「すまんっす、本当にすまんっす」
「誰にやられた?」
「あ、あいつっす!」
控え室のドア付近に、こっちに気づいた人影があった。
気づいた人影が、通路の方に走って逃げていく。
それに反応して、杖を握りながら険しい顔でノニールが部屋を駆け出していく。
俺も動くが、流石に巨体の俺は足がすごく遅い。それでも走ってノニールを追いかけた。
先行するノニールを追いに、俺は廊下をしばらく走った。
ニ分ほど廊下を走っていると、ノニールが止まっていた。
魔法を使い、逃げた人影の動きを止めていた。前の方にいる人間は、灰色のネズミの頭の男だ。
獣化病のステージ3というネズミ男は、足が完全に止まっていた。
杖の中にある石が光り、風の輪を発生させていた。
その風の輪が、ネズミ男の体と両腕の周りをグルグルと回っていた。
「もう、逃げられないっす。逃げようとすれば、風の刃で腕や体が切られちゃうっすよ」
ノニールの魔法で、ネズミ男が立ったまま動けない。
両手を風の鎖が絡みつき、ネズミ男は観念した顔に変わる。
「ノニール、もう止めたのか」
「お前らは……なぜ」口惜しそうに、俺たちを睨んでいた。
「さあ、僕らを後ろからやった攻撃した奴は誰っすか?」
「誰がお前なんか……ひっ」俺が巨漢で近づくと、威圧感があった。細めた目を、斜めにする。
間の抜けた顔だけど、巨漢の体で威圧していった。
「言わないと、凶暴な巨大な熊に食べられちゃうっすよ」
怪しく笑うノニール、俺は大きな体で近づく。
ネズミ男は、三メートル近くある大きな熊の俺を見て震えていた。
「ブリニッド様……」恐怖にひきつったネズミ男は、簡単に吐いた。
「やっぱりそうっすか……」男の自供に合わせて、魔法を解除したノニール。
ネズミ男は、戦意を喪失してヘナヘナとその場にしゃがんでしまう。
「まずいな、奴は舞台にいるぞ……」
「そうっすね、シアラ様が危ないっす!」
俺はすぐに動いていた。だが、巨体の俺がたどり着くのはやはり時間がかかった。
先にノニールが、俺の前を走って進んでいく。
少し遅れて俺が、舞台の入場口に向かっていく。その頃、舞台上ではとんでもないことが起きていた。




