072
――それは今朝のこと。
俺は朝早くに、レティアの部屋に来ていた。
部屋にはノニールもいた。一行の中で唯一いないサラは、医者の仕事でこの時間にも関わらず出勤していた。
三人でテーブルを、囲みながら朝日でまだ薄暗い部屋で話をしていた。
「今日は決闘の日だな?結局この日を、迎えたな」
「そうね、準備は出来たでしょ」
「いよいよ本番っすか?でも、こんな方法でいいんすか?」
ノニールが疑問を口にした。
「信任されれば、二人は必ず戦うわ。だから、この行動は必要なの。
大丈夫、あたしの方で二人に連絡を入れてあるから」
「手筈は順調のようっすね。こちらも、兵士の接触に成功したっす」
「仕事が早くて、助かるわノニール。予定通り、シアラの方に向かってもらえるかしら?」
「了解っす」敬礼ポーズで応えるノニール。
「俺はどうなる?」
「マトイはあたしと一緒に、マリアに来てもらうわ」
「わかった」
敬礼をしているノニールが、なぜか俺をジーッと見ていた。俺は、やる気無さそうに敬礼ポーズをした。
「それにしてもレティア様」
「何かしら?」
「僕がこんな事を言うのもアレっすけど、外部である旅人の僕らがこの戦いに口を出してもいいっすか?」
「ノニール、そんなことを気にしているの?」
レティアは、迷いなく言っていた。
「今のあの二人には、勇気が必要なの。
そのためには、弊害になる全てのモノをすべて排除しないといけない。
勇気ってね、自分の中から湧き出るものよりも外から干渉されるものの方が大きいのよ。
自分のために何かやるより、他人のために何かをやる。それが勇気なの」
「レティア様が言うと、本物の勇者の言葉に聞こえるっすね」
「本物よ!」ノニールが茶化し、レティアが軽く怒っていた。
レティアの考えは、わからなくもない。
「ただ、一個だけ気になる点がある」
「マトイ、なにかしら?」
「結局、この噂を蒔いた奴は分からない」
「そうね」レティアは、難しい顔を見せていた。
マリアとシアラの二つの噂は、いつの間にか自然に出来ていたわけではない。
煙のないところには噂は立たない。だからこそ、そこまで調べたかった。
この二日間レティアも、ノニールも、貴族や兵士、更には大臣といったところに聞き込みをしていた。
そこで、二人の噂は虚報であることを知った。
知ったが、噂の出処はわからないままだ。
「まあ、考えても仕方ないっす。まずは二人を、戦えるようにするっす。
じゃあ、そろそろ僕は行くっすよ」
「ノニール、お願いね。決闘前に、あたしたちの戦いは始まっているのだから」
最後に、レティアが会議を締めていた――




