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久しぶりに同じ部屋に、四人が集まった。俺の椅子だけは二つ分だけど。
その中で、サラだけがよく状況が飲み込めていないが。
俺は早速、洗ってもらった服に着替えていた。
それを再び着て見せた俺に、満足気な顔を見せたサラだった。
「うん!やっぱりマトイさんは、こっちが似合いますね」
「昨日は、一日中裸だったからな」
「裸?」ビクッと反応したのは、レティアだ。
「レティア様、どうかしたっすか?」
「いや、なんでもない、なんでもない」
レティアが朝のことを思い出して、勝手に照れていた。
どうやら、屋上に行ったあと部屋を間違えて俺の部屋に来た。
俺の部屋はたまたま鍵が掛かっていないので、レティアはそのまま寝てしまった事の顛末だが。
恥ずかしがるレティアの隣で、サラが俺に語りかけていた。
「マトイさん、お洋服また買いに行こうね。着替えがないと、困りますからね」
「ああ」なんだか俺は、だんだんサラの着せ替え人形になっていないか。
まあ、自分がファッションに疎い。この体なので、一緒に付き添ってもらえるのはありがたい。
しかも、俺の所持金では衣装も買えないからな。
「あっ、みなさんが揃ったのでお茶でも入れますね」サラが言いながら、立ち上がった。
それとほぼ同時に、ノニールが口を開く。
「で、レティア様はどうでしたか?シアラ様のこと」
「あの子は、やっぱり戦う気があるわ。だけど無理ね」
「そうっすか。シアラ様の話ですが、マリア様が暴行する人間と言っていたっす」
「それ、昨日も聞いたぞ」俺も口を挟む。
「あら、あたしはマリアの不倫の話を聞いたわ」
「シアラ様が、やはり同じことを言っていたっすか」
「そうね、でもシアラは暴行をしていないわ。これに関しては、間違いないと思う」
レティアの考えは、俺も同じだ。
三人で喋っている間に、サラが四人分の紅茶を入れていた。
紅茶からは、いい匂いがしていた。
「これは……」
「『サトラゾの葉』をいれた薬膳紅茶です。
これを飲みながら話すと、頭がスッキリ整理されるんです」
「へえ、ありがとう」レティアが感謝を述べた。
「それで、なにかあったのですか?真剣に話をされていますけど」
「今回はサラには関係ない、勇者の話だから」
「そうですか」紅茶を配りながら、サラも空いている椅子に座る。
そのまま穏やかな顔でサラは、静かに紅茶を飲んでいた。
「不倫と暴行、それぞれを否定している」
「そうね、ノニールもマリアのことはどう見る?」
「うーん、マリアさんのことはよくわからないっす……」
ノニールは、レティアほど内密ではないようだ。
「マリアがシアラと戦う決闘は、あと二日後か?」
「そうね」帰り際に、大通りの闘技場を見てきた。
円形の闘技場では、まばらに観客が入っていた。
この街で兵士たちが、模擬戦闘をやっていた。
闘技場の柱や壁に、決闘のポスターがあちこち貼ってあった。
勇者を決める決闘、これは一大イベント化していた。
街の中にもいっぱいポスターが貼ってあるし、賭けなんかも流行っているみたいだ。
「なあ、レティア。決闘も近いしどうする?」
「一つ、わかったことがあるの」
「わかった?」
「二人は信任されない以上、決着をつけないと思う」
「信任?どういう意味だ?」
「勇者は信任されないと、勇者になってから苦労するわ。
みんなが認めない勇者って、裸の王様と同じ。
信任されない限りは、本気で戦わないし、決着もつけない」
「信任か、どうすればいい?」俺は単に聞いてきた。
「簡単よ、認められる人間になればいいわ。
そうか!二人の噂が嘘だと晴れれば、戦えるんじゃないかしら?」
レティアが紅茶を飲みほしながら、立ち上がった。
「ねえ、しばらく身辺調査をしましょ。この誤解の元になった理由を、知れば二人は戦えるわ!」
レティアがやる気を見せて、拳を突き上げた。
俺は半分乗り気ではないが、勇者レティアに流れに従うのだった。
サラはその隣で、のどかに眠っていた。




