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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
五話:『纒 慎二』と双子の友人
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俺はあの事件で、人を見る目が変わった。

皮肉にも事件のせいで失ったものもあったが、得るものもあった。

それは人間の表情で、ある程度相手の考えが読めるという簡単な心理学。

もっと噛み砕いて言えば、敵意を読み取れるようになった。だがあくまで簡易的なものだろうが。


「ご、ごめんなさいですわ」

綺麗な言葉で、上品に取り繕ったとしても人間の本質は決して隠せない。

上品なマリアは、俺に対して深々と頭を下げた。

だがショックなのは、クラーだ。小さい女の子クラーは、怯えるような目でマリアを見ていた.


「マリアの考えは、クラーにその感情を持っていたことだ。

敵意のような怒り、それを隠そうと視線を逸らす……か」

「現状は、妖魔退治なんかはなんの役にも立たない。それでも続けていたクラーが、私は許せなかった。

神聖な決闘(デュエル)が近いわ。今はほかのことに、かまける余裕はない」

「そうか」俺は淡々と聞いていた。


「クラーは……マリア様が、妖魔に対して動いてくださるからついたの。それは分かっています」

「それでも私は、どうしてもシアラに勝たないといけないですわ。

決闘での勝利だけが、次代の勇者を決める唯一無二の結果。

勇者の称号を手に入れなければ、世界はおろかこの街(アルカンテ)すら救えないですの」

「その勇者を、シアラに譲るのはだめなのか?」俯くマリアに俺は聞く。

「彼女は、素行不良で横暴です。兵士に暴力を奮う彼女が、勇者になったらルデース家は終わりですわ。

だから私が勇者になって、勇者の剣を手に入れて魔王の穴を封じなければなりませんわ」

マリアも、どうやら譲る気はないようだ。

ただ、その想いはシアラと同じように魔王の穴に向いていた。

それだけは、救いでもあり勇者として育ってきた使命なのだろう。


「シアラは、そこまで酷いのか?」

「酷いだなんて……彼女は私の双子ですわ」

「ああ、そうか」

「でも、シアラは同じ双子として許せませんの!」

マリアが、眉をひそめて怒っていた。


「何かあるのか?」

「シアラは、私のことをあの大臣と寝たと嘘をつきましたの。

でも、それを周りが信用して……私はまだ勇者として信任されていませんの。

シアラの方こそ、兵士に暴行を働いているのに許されませんわ!」

「まあ、落ち着け」ようやく感情的になったマリアを、俺はなだめていた。


「マトイ君、そろそろ時間っす。一旦、宿に帰るっすよ」

ノニールが立ち上がった。部屋に置かれた豪華な置き時計は、夜十時をさしていた。


「ああ、そうだな。洗濯してもらっている服の方は……」

「出来上がりましたら、宿の方に届けますわ。マトイ様、大通りの『黒鉄亭』でよろしかったですわね」

「ああ、頼む」マリアは、すぐに冷静に落ち着いた顔を見せていた。

「それと……レティアに、伝えておいてください『私たちは大丈夫です』と」

「『大丈夫』っすか、了解っす」

最後にマリアが俺たちに伝言を託して、俺とノニールは部屋を出た。



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