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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
五話:『纒 慎二』と双子の友人
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058

(??? EYES)

ここは貴族街の中にある酒場だ。

大都市アルカンテにあるこの酒場で、俺は一人の男に呼ばれていた。

何度か顔を見合わせている男は、マントとフードをつけていた。

白いシャツに、茶色系のズボンを履いた俺は、貴族たちの中で少し浮いているフード男の前に座った。


「こんなところにわざわざ来るとは、あんた」

「むしろ今なら、こちらのほうがいい場合もある。向こうには、敵も警戒に当たるだろう」

「なるほどな、あんたも忙しいわけだ」

酒場の客層を見ると、確かに上品な客も多い。


「それより、次の戦いはどうだ?次の戦いまであと四日だろう」

「もしかしたら、今回は決着が着く可能性が高い」

「決着か……我々にとってこの状態が、続かないと不利になる」

「これは?」対面の男が取り出したのは、小さな小瓶。丁寧に、テーブルの上に置いてきた。


「この毒を使って、始末できるか?」

「勇者は、特別な修行を受けている。これぐらいの毒では、始末は難しい。

実際、何度か試みたが毒では殺せなかった。盗賊の女も、かなり目を光らせているからな」

「ふむぅ、ではどうする?」

「方法は、一つしかないだろう。誕生を未然に防ぐには、誕生した瞬間に叩く」

「まさか……強硬手段か?」

「今から言う薬を、用意できるか?」

俺はフード男に、不敵笑いながら一つの提案をしていた。

それを、フード男はメモをしていた。


「わかった、用意しよう」

「頼む。勇者が誕生してしまえば、我らにとって不利になる」

フード男はそう言いながら、俺に重そうな小袋を手渡していた。

俺は、無言で袋を受け取っていた。



(MATOI’S EYES)

ここは、貴族たちの住む高級住宅街。建物の外観が、入口よりさらに豪華だ。

城を中心に貴族街が形成されていて、一戸あたりの敷地がとても広い。

俺たちがいるこの家も、まさにそうだ。庭付きの三階建ての屋敷だ。


上空から見ればカタカナの「コ」の形になっている建物で、二箇所ある玄関の右側から入っていった。

応接間も外観に負けず劣らず豪華で、天井にシャンデリアや高級な家具が並んでいた。

中央の大理石のテーブルを囲み、ふかふかソファーに座りながら一人の女が出迎えた。


「ようこそ、おいでくれました。私の名は、『マリア・ルデース』と言いますわ。

この館の当主をしておりますの、私だけではありませんが……」

マリアと名乗る女は、長いツインテールだ。髪の長さは、腰ぐらいまであるだろうか。

青いセーラー服のような衣装には、紋章だ。これは、レティアと同じ勇者の紋章だ。

半袖で、長いスカートを履いていて上品そうな立ち姿だ。

まさに、清楚なお嬢様といったところだ。


「マリア様……お疲れ様でした」俺の隣に座ったクラーが、頭を下げながら声をかけた。

「いえ、みなさんが妖魔を倒してくださったので、私は火の魔法で始末しただけですわ」

「確かに、あれは凄かったな」

裏路地に来たマリアは、目玉の死骸に向かって槍を構えて魔法を唱えた。

この槍は、魔法の媒体と同じでノニールの杖がわりのような役目をしている。魔法使いのノニールが説明した。

マリアが放った青白い炎が、路地いっぱいに転がる悪魔の目玉の死骸を焼き払う。

炎により灰になった目玉のおかげで、裏路地の悪臭は完全に消えていた。


「『ゼロファイアー』っすか?」クラーの隣にいるノニールが聞く。

「はい、流石はノニール様ですの。良くご存知で……」

ちなみにマリアも、ノニールのことは知っていた。流石は、勇者候補といったところだろうか。


「僕も火の魔法習得を……頑張ったっすけど、才能が無かったっす。

僕は火の魔法と相性悪いらしくて……いやはや羨ましい限りっす」

「いえ、私もたまたまで……それにしてもマトイ様でしたか?」

「ああ、なんだ?」マリアもノニールの隣に座っていた大柄な俺が、目に入ったのだろう。

ソファーに座った大きな体の俺は、マント姿でマリアを見ていた。


「あの目玉を、素手で倒したのは本当でしたの?」

「ああ、そうだ」

「すごいですわ、妖魔を素手で……」

「あれしか、俺は戦い方を知らない。まあ俺の体を利用するなら、この方がいいだろう。

それよりも、このマントも貸してくれるので……助かる」

俺はマリアに、素直に礼を言った。俺の熊の体を隠しているこのマントは、実はマリアから借りたものだ。


「悪魔の目玉の血は、なかなか汚れが落ないですからね。でもこの屋敷には、洗濯のプロのメイドがいますから」

「これが、メイドか」

メイドはカフェの中だけの世界だと思っていたが、まさか実在するとはな。

部屋の隅で、ドア越しにいるメイド服を来た女性が静かに綺麗な姿勢で立っていた。


「ノニール様、コンレイは元気しておりますか?」

「ああ、ちょっとケガしたけど元気っす」

「ケガですか、それは大変ですね」

ノニールとマリアが会話をしている中、俺は首をひねった。


「コンレイ?」

「コンレイ・レティア。レティア様の名前……というより幼名っすね。

マリア様はレティア様のことを、コンレイって呼ぶっすよ」

「へえ」ノニールに説明されて、俺は納得した。

ここの街に来てから、いろんな単語と遭遇するので覚えるのが大変だ。


「いやあ、全くっす。でもレティア様は、体の丈夫さが取り柄っすから問題ないっす。

そりゃあ頑丈で頑丈で、しぶとさもピカ一っす」

ノニールは笑顔で、軽くレティアをディスっていた。

本人に聞かれたら、絶対に怒られるぞ。


「まあ、そうでしたの。それは、とても良かったですわ」

それでもマリアは、表情そのものが穏やかだ。

俺はさっきから彼女の視線が、上を見ているのが気になっていた。


「マリア様、だっけ?」

「マリアでいいですわ」

「さっきから、よく上ばかりを見ていたが何かあるのか?」

「なにか誤解されているようですが……」

マリアは、俺との会話中に目を逸らした。

ずっとだ。俺が話す時も、ノニールが話すときも、彼女の目が泳ぐ。


「何か、あんた俺たちを嫌っているのか?」

「まさか……私はお二人を嫌う理由はないですわ」

「じゃあ、クラーか?」

その名前が出た瞬間、はっきりとマリアの顔が変わった。

眉が動いて反応していた。笑っているけど、形が崩れていた。


「な、なにをおっしゃっていますの?」

「なるほどな、シアラが嫌っているのはそういうところか」

「あら、シアラにも会ったのですの?」

「シアラは言葉がストレートだし、脅しみたいなことを平気で言う。

だけどあんたもあんたで、相当めんどくさいな」

「そんなこと、ありませんことよ」

「じゃあ何で怒っているんだ?クラーに対して……」

「黙って!」

マリアは、俺に対して強く睨んでいた。

そこには、彼女の本性のような強気の顔を覗かせていた。



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