052
慌ただしい声から、いろいろバタバタしていつの間にか翌朝だ。
四部屋チェックインしていた部屋の一番階段手前の部屋で、眠っていた俺が目を覚ます。
すぐに隣の部屋に入った。そこには、一人の女が眠っていた。レティアだ。
鎧を脱いでいた彼女は、ベッドで眠っていた。脱がされた金色の鎧は、綺麗に置かれていた。
隣の椅子にサラが座って、レティアを看病していた。
「サラ、どうだ?」
「はい、軽い打撲程度です。
患部に『レノリスの葉』の湿布を貼りましたので、二、三日休めば治るでしょう」
「それはよかった」
昨日の夜に運ばれたときは、ボロボロな姿で戻ってきたレティア。
一階の酒場に降りると、戦士風の男に肩を担がれて気を失ったレティアがいた。
綺麗な顔が汚れて、全身が細かな傷だらけで、右腕を抑えていた。
力のある俺は急いでレティアを背負い、この部屋に運んだ。
「最初に見たときは、腕がダランとして骨折していたかもしれないですけど。
でも、打撲程度で済んだので良かったです」
「ああ。処置も迅速で、それも功を奏したようだ」
「骨に異常もなかったですし、さすがは勇者ですね」
俺が運んでベッドに寝かせた後、天才的な腕を持つ医者のサラは適切な応急処置をした。
迅速なサラの手当もあって、レティアはこうして無事に眠っている。
と思いきや、レティアが魘されていた。
「ここっ、まだっ、終わって……あれ?」魘されたレティアが、急にパッチリと目を開いた。
「あっ、起きたか」俺もレティアが心配で、彼女の方に顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですか、レティアさん」
「ううっ、あたしは……」
体を起こして、まだ体が小刻みに震えていた。
右腕には包帯が巻かれていて、薬の匂いがした。
傷だらけのレティアは、下着姿で白いブラジャーが見えていた。
左肩にも湿布、顔のアザにも湿布を貼ってある。
「どうですか?体調は?」
「ええ、平気よ。体も重くないし。サラが手当したの?」
「はい」心配そうな顔のレティアに、サラは明るく笑顔を見せた。
「ありがとう……サラ」
「いえ、医者として当然です」
「でも……アイツは……」悔しがっていたレティアの目が、俺の顔を見つけた。
「ああっ、何でいるのよ!」
慌てて、下着姿の上半身をシーツで胸を隠す。顔を赤くして、俺をはっきり睨んでいた。
「わ、悪いな」レティアの下着姿を見て、俺はそっぽを向くしかない。
「別に……いいけど」シーツでしっかり胸を隠したレティアは、照れている様子だ。
「マトイさんは、傷だらけのレティアさんをここまで運んでくれたのですよ」
「そう、ありがとね」
「ああ」怒られそうなので、顔を背けて答えていた俺。
「ちゃんと、こっちを見なさいよ!マトイっ!」
レティアが厳しく言うと、俺はおそるおそるレティアの顔を見ていた。
顔は赤く照れている様子だが、口をしっかりと結んでいた。
「あんたにも、また借りができたわね……マトイっ。ありがと……」
怒らない、むしろ泣きそうな顔で感謝された。
「レティアさん、それにしても何があったんですか?」
「妖魔よ」
「妖魔?」反応したのは俺だ。
RPGなんかでよく聞く名前は、大概敵に位置づけられる名前だということを理解していた。
俺が声を発したタイミングで、コンコンとノックが聞こえた。
「サラさん、いるっすか?」ノニールだ。
「あっ、はい。レティアさんも目覚めましたし」
「そうっすか、ちょうどよかったっすよ。お客様も来ているし」
「誰か来ているの?」レティアが聞き返した。
「とりあえず、入るっす」
ドアを開けた、ノニール。
いつもどおりのアロハの魔法使いの隣には、一人の小さな女の子が立っていた。




