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調査団がこのトロンダールの町から、三か月が過ぎた。
俺の仕事は、決まっている退屈な日常だ。
朝起きて、トロンダールの町を見張る。
ご飯を用意して、町を掃除する。
トロンダールの町は、町というほど広くはない。
聖女の柱を中心に円形の柵ができあがり、町はその円の中に存在していた。
町といっても存在する建物は、僅かに三つしかない。
ただ、町というのは昔の歴史の名残だ。
宿舎と事務所と、あとは工房だけだ。
今、この街には七人しかいない。
民間人はダムレイただ一人で、他は各地の兵士たちだ。
最も、その兵士も上級兵士や騎士の部類の人間だからそれなりに腕が立つのだろう。
そんな中、俺は事務所の一室に来ていた。
狭い部屋は、待合室のように木の長椅子があった。
「アントン殿、見張りの時間が」
そこに来たのは、モーリタニア連邦の上級兵士。
三十七歳の男の兵士の名は、クローデという。
クローデが、椅子に座っている俺のそばにやってきた。
「クローデか、昼から夜までだっけか?」
「ええ、お願いします」
この街には、一つだけ見張り台があった。
中央にある事務所、その中に見張り台がそびえたつ。
高さは五階建てに相当する。部屋の隣には見張り台の梯子があった。
俺は、梯子を上っていた。
見張り台を上るには、梯子しかない。その梯子も一つだけだ。
だから見張りをする人間は、一人しかいない。
(いつも通りの見張りか……)
今頃クローデは、食事をとっているのだろう。
見張り台は狭くて、食事をするにも狭い。
このトロンダールの食事は、もっぱら魚料理が中心だ。
港町だし、釣りをすると魚も取れる。俺はまもなく、見張り台の上に上った。
そこから見えるのは、円のように囲む壁の先の世界。
「黒い世界」
町の外は、どこまでも広がる黒い土の世界だ。
荒野でもあり、枯れ木がいくつか見えるがとても自然豊かとは思えない。
(肉や酒が、恋しくなるな)
そんな俺は、そばに置いてある望遠鏡を覗き込む。
(さて、異常はないか……)
だけど見張りをして数秒後、俺はあるものを見つけた。
「人だ!」
望遠鏡には、はっきり一人の人間が姿を見せていた。
そして、その人間は鎧を着てこちらに向かっていた。




