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勇者の登場、異様な熱気のホーフブルグの演説から調査団の第一陣の発表。
その日の夜の宿舎では、活気に満ちていた。
ホーフブルグは、士気を上げるのがうまい。
サプライズを用意して、調査団の出発前に最高潮に士気を高めていた。
「隊長は、選ばれなかったのですか?」
サーレスと夜の食事をしていた。今日の食事は、豪華だ。
やはり、魚中心の食事なのは変わらないが。魚料理がたくさん並んでいた。
「そうだな、サーレスは第一陣に選ばれたか。
こういうのは、所属ごとに同じだと思っていたのだが」
「他の国も、それぞれ別々に分かれているらしい。
残るのは七人、他のメンバーは全員調査団に参加らしいな。
団長たちの首脳部が、どうやら決めたのだろう。な、サーレス」
俺は若い部下の右肩に、手をかけた。
「怖いのか?」
「いえ、むしろアントン隊長の方が……第一陣にはふさわしいと。
こちらは、トロンダールに残って守備をすると」
「裏方だと思っているのか?」
「いえいえ、滅相もない」
「俺はこの人選は、よかったと思っている」
「どうしてですか、アントン隊長?」
首を傾げたサーレスが、俺に疑問を投げかけた。
「お前は若い、これからこの調査団を経て、将来がある。
お前がこの大陸で見聞きした新しいことは、カイペルの未来につながるだろう」
「隊長……」
「まあ、勇者セイツ様もいるんだ。彼がいるし……」
「ああ、心配だ……どうしよう」
そんな俺たちのそばを、ブツブツ言いながら歩いていたのはダムレイだ。
「ダムレイさん?」
「ああ、先ほどはどうも。カイペルの騎士様」
ダムレイは俺の方を見て、頭を下げた。
こうしてみると、普通の男性医師にしかみえない。
「どうしましたか?」
「いえ、僕とナーリーが別れることになりましてね」
「世界平和医師団もですか?」
「ええ、兵士さんは理解できますが……僕はどうしても理解できないのです。
なぜ、医者の僕と薬剤師のナーリーが別々なのか!」
「ダムレイさんは、優秀な医者ですし、ここの拠点を守って負傷兵の治療にあたるとか。
ここは、一応『聖女の柱』もあって安全ですし。
帰る場所を守るのは、とても大事な仕事ですよ」
「そうじゃないんだ、見たんだよ」
「はい?」
「船にいた時から、ナーリーがホーフブルグの部屋に夜に呼ばれたのを」
「薬剤師して……ではないのですか?」
ナーリーは、大人というよりは少女の見た目だ。
それとも、ホーフブルグはそういう趣味があるのだろうか。
「いや、それが……」
「大丈夫ですよ、そんな関係じゃないです」
ナーリーは、ダムレイのそばに来ていた。
小さいナーリーは、いつも通り元気な笑顔を見せていた。
やっぱりその顔は、無邪気な少女の顔に見えていた。
「ナーリー」
「大丈夫です、私は薬剤師として彼にお願いしただけですから」
最後の笑顔は、それでもどこか少し影を落としているようにも俺には見えた。




