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この街は狭いし、建物も少ない。
周りを円形の壁ができているが、狭い。
その円形の壁の先には、町の外があるだろう。
それでも、俺は気になることがいくつもあった。
「ユキ、何かあったのか?」
「別に、怒ってはいない」
「俺はそんなことは、言っていないぞ」
俺に言われて、気まづい顔を見せたユキ。
それでも、表情をあまり変えない。真剣な顔で、何か地面を見ていた。
「マトイ殿は、フロランタンの話をしたな」
「ああ、皇帝フロランタンは世界を救うために国を統一した。
世界を救うためこと、つまり来るべき魔王との決戦に備えて……」
フロランタンの野望は、国を統一して来るべき魔王に備えるためだ。
その話を、俺はユキやシブーストに話した。
隠す必要もないし、船旅が長かったから話すことにした。
「魔王が蘇るとき、この世界に前兆が起こるらしい」
「どんな奴なんだ、魔王は?」
「さあ、詳しいことはレティア殿が詳しいだろう」
「なかなか、詳しくなさそうだ。
現実問題、ここにきていないのがその理由だ」
ユキのそばには、俺がいた。
だけど、シブーストもサラも、もちろんレティアたちの姿もない。
おそらくアントンに案内されて、宿舎へと向かったのだろうか。
「それにしても、ずっと曇っているな」
「曇っているが、雨は降らない」
「確かに、この船旅でも雨は一度もなかったな」
船旅を思い出して歩いていると、まもなくして俺たちは円形の壁の出口の近くにいた。
だけど、それは明らかに違っていた。
「これは……黒い」
それは、町の外に広がる黒い地面。
黒い土が、壁の外にはずっと広がっていた。
町の外は、まさに黒の荒野だった。
「これは……」
「『魔王土』だ。こんなものが、この大陸にあるとは」
「なんだ、それは?」
ユキがしゃがみこんで、地面の黒い土を手にした。
見た目は、ただの黒土にしか見えない。
「錬金術、いや、魔術の一種で用いられる錬金アイテムの一つだ。
ビレウス所長なら詳しいのだろうが……」
「ボクは、わかるっすよ」
それは、背後にいたノニールだった。
「の、ノニール」
「いつからついてきたんだ?」
「ずっとついていたっすよ。やだなぁ。ボクって、そんなに存在感ないっすか?
それに……レティア様も気にしていたっすよ」
そんなノニールが上を指さした。
上空には鳥……というよりは人が飛んでいた。
人に翼が生えていて、それが自由に空を飛んでいた。
「あれは……」
「魔族っすよ」
町の外にある、黒い台地の上空には魔族が何人も空を飛んでいた。




