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アントンという男は、老騎士の見た目だった。
腰には短いけど剣が二本、刺さっていた。
肩あての紋章は、見たことがない。
ひし形の模様に、逆三角形が中に三つ。
「ようこそ、このトロンダールに」
「初めまして、ダムレイの娘のサラと言います」
「そうか」険しい顔で、サラを見ているアントン。
「あなたは、何者なの?」聞いたのは、勇者レティアだ。
「勇者……か。俺の名前はアントン。
この町、トロンダールの警備をしている者。
十数年前の調査団の後始末をする、この大陸にとり憑かれた男だ」
勇者のことは、アントンは知っているようだ。
まあ、少し寒そうなビキニ鎧のレティアには突っ込まないらしい。
「とり憑かれた?」
「まあ、この大陸は亡霊が多いからな。
死んだ大陸と言われているのは、そのためだ。
思いに縛られて、逃げることも出ていくこともかなわない。
この島の、呪いが存在するのだよ」
「呪い?なんなのよ、それ?」
レティアが、嫌そうな顔を見せた。
「この大陸には、古くから魔王の呪いがある。
勇者と魔王の戦いの果てに、この世界は勇者エドによって救われた」
「当たり前でしょう」
「だが、敗れた魔王はどうだろうか?
勇者に復讐をするために、再び蘇らんとしている」
「そうらしいな」
戦いの最後でフロランタンの言葉の通りで、間違はなかった。
どうやら、この大陸ではこれが常識なのかもしれない。
この空が、灰色でどんよりとした曇りがため込めていた。
船に乗った時から、ずっとそうだがこの大陸の近くの雲がずっと曇りのままだ。
晴れている空に、なったことがない。
「ところで、勇者よ?」
「何よ、急に?」
「ここに来たのは魔王の復活を、阻もうとしにきたのか?」
「それは……」
レティアが口に出そうとすると先に反応したのが、サラ。
「私は母親に会うために来ました」
「ダムレイの娘が……正気か?」
それは、アントンも驚きの一言だ。
そのまま、アントンはサラの方をジロジロと見始めた。
見た目は旅医者、幼く童顔な少女だ。
とても戦う強さらしきものは見えない。
むしろ可憐でおっとりした、どこにでもいるような町娘だ。
「薬剤師ナーリーに、会いたいというのか?」
「はい」
「そうか、その姿で言うのか?」
「私は本気です」
どんなに言われても、サラは強気だった。
ナーリーに会いたいという気持ちだけは、変わっていない。
いろんな人間に反対されても、彼女は諦めないし曲げたりもしない。
「だが、お前はこの大陸について……何も知らないだろう」
「それは……」
「では聞くが、その石柱が一体何かわかるか?」
それは、町のほぼ中央に大きな光り輝く石柱が見えた。
石柱は緑色の光を放ち、周囲を照らしているかのようだった。




