047
サラの言うとおり、海のそばにその都市はあった。
大きな都市を、大きな門で街を守るように高い壁が囲んでいた。
門では兵士が検問を行うが、勇者一行だとレティアが言うとすぐに俺らは門を通された。
大きな門をくぐった先に見えたのは、西洋風のレンガの建物が立ち並ぶ。
いくつもの高い西洋風の家々が、軒を連ねていた。
ずっと奥には、さらに大きな西洋風の城らしきものも見えていた。
もちろん、門を入ってすぐの大通りは多くの人で賑わっていた。
さすがはアルカンテ、文字通りの大都市だ。
大都市についたところで、俺とサラ、レティアとノニールで別行動になった。
これだけの大きな都市だ、行くところが分かれるのは無理もないだろう。
「それじゃあ、私たちは病院に行きましょうか」
「ああ」行くあてのない俺は、サラについて行くことにした。
俺はサラのボディガードでもあるし、サラは病院で届け物があると前に言っていた。
「と、その前に……ここ行きましょう」
すぐにサラが案内してたどり着いたのは、病院ではない。大通りにある一軒の店だ。
見て直ぐにわかったが、そこは服屋だった。
結構大きめの店舗内に、服がガラス越しに綺麗に展示されていた。
「いらっしゃいませ」
「あの、あたしの連れに合う服を探しているのですが……」
女の店員に、サラが丁寧に声をかけていた。
ピンクのベストに、短パンで長い髪の店員は俺の方を見て考えていた。
「彼ですか?」一応マントを着てフードをつけているが、大きさは隠せない。
「はい、お願いします」
「では、フードをとってくれますか?」店員に言われ、俺は渋々フードとマントを外す。
大きな熊の体があらわになり、女の店員も最初の一瞬は驚いた。
だが、直ぐに冷静になって、「なるほど、身長を図らせてもらいますね」とメジャーを取り出していた。
「大きいですね、身長は……なるほど。横もありますね」
俺の前に立って、メジャーを使っていろいろ俺の体を計っていた。
とりあえず、俺はじっと動かずに成り行きを見守ることにした。
「んー、あまり洋服のバリエーションはないですが……少々お待ちください」
女の店員は、そそくさと奥の方に入って行く。
まあ、無理もないよな。俺の身長は、二メートルを軽く超える身長。
この世界の標準サイズを、はるかに超えた大きさなのだから。
「楽しみですね、新しい服」隣のサラが、にこやかに話してきた。
「どうして、ここで服を買わせた?」
「ラムジー村には、大きい服が売っていないですし。
それに……ちゃんとした病院だから正装しないとね」
「それもそうか」サラにそう言われて、理解できた。
喋りながら待っていると、まもなくして女の店員が何か持って現れた。
大きなベストと、大きな短パンと大きな靴の三つを持ってきた。
どれも、明らかに人間サイズの三倍はあろうかという大きなサイズだ。
「すいません、大きさに合うのはこれぐらいしかないので」
「いえ、マトイさん。それじゃあ、着替えてみましょうか」
「わ、わかった」
促されるまま近くにあった試着室に、服を持って俺は入っていく。
カーテンを閉めて、俺は着替えてみた。
大きな体で、試着室は狭く感じた。服を着るのは、この世界に来て初めてだ。
つまり、俺は今までマントと裸だというのか。
そう考えると俺は、ただの変態じゃないか。現代社会なら、無論通報レベルの騒ぎになるだろう。
慣れない服の試着に戸惑いながらも、五分以上も費やす。ようやく俺は、外に着替え終わりの合図を出した。
「じゃあ、開けますね」
店員がカーテンを開けて、試着室から出てきた俺は、深緑のベストに、黒い短パン。
足が短いので短パンは、長ズボンのようになっていた。
袖なしのベストも、長くない腕に合っていた。
更には短足の足元は、大きなスニーカー。
「お似合いですよ、お客様」
「うん、格好いいですよ。マトイさん」
「そうか……そうだな」照れ隠しで頭をかきながら、俺は頷いた。
「はい、では8500ゴルダです」
「へ?」金額を聞いて俺は戸惑った。俺の所持金は7000ゴルダしかない。
自分の所持金を思い出していると、直ぐにサラはポケットから財布を取り出した。
迷うことなくサラは、女の店員にお金を渡していた。
「私が出します。マトイさんには、普段からお世話になっていますし。
それに、ちゃんとお礼もできていませんから」
「サラたんはマジ天使っ!」
「え?なんですか?」
サラは俺の現代的な褒め言葉に、キョトンとした顔を見せていた。
俺の目の前で女の店員が、お釣りをサラに渡していた。




