042
あの時、俺が拾った赤い固形物がた俺の手のひらにあった。
それを、この酒場の一席で見せていた。
そこに、レティアやノニールが覗き込んでみた。
「確かに、魔術的なものではないっすね」
「これは、薬じゃないかしら」
ノニールとレティアが、それぞれ答えた。無論隣にいたシェイゾも、全く知らない。
「サラは、これが何かわかるか?」
「これ、薬ですね」サラが答えた。
「薬はわかるけど、ラオルのローブの中から出てきたんだ」
「他にも何粒かあります?」
「残念ながら、これ一粒だけだ」
「なるほど……残念ながらわかりませんね」
「そうか、仕方ないな」
「研究機関に、渡したほうがいいですね。大学とか、大病院とか、薬学研究所とかはこの辺りにありませんが……」
「そうだな、とりあえずサラにこれは渡しておくよ」
俺はサラに、赤い薬を手渡していた。
サラは大事そうに、茶色の袋に入れていた。
「ダッツは、帰ったのにわざわざ戻ったのに助けてくれたのか」
「ああ、兄貴のピンチだと思って助けに来ました」
「サラ、なんか変な事を言ったか?」
「いえ、特には……何も」
否定をしながらも、口元をなぜか上品に抑えていたサラ。
サラの顔色が少し赤いのは、気のせいだろうか。
「でも、助かったよ。ありがとう」
「兄貴こそ、無事でなによりっす」
「ダッツは結局、向こうで暮らすのか?」
「ああ、やっぱり向こうで暮らす。ずっと決めたことだ。
あいつも、俺がいなくなると嫌がるしな」
「そうですね……ダッツさん。本当に、ありがとうございました」
サラも、ダッツに感謝の言葉を述べていた。
照れくさそうに、ダッツが狼頭をかいていた。
「本当に助かったわ、あたしたちもあのまま……」
「いやあ、こんなに感謝されるとは俺は、俺は……」
酒の力で泣き出し始めたダッツ、狼の目にも涙だ。
照れくさそうに、感謝されるダッツ。少し俺が見ても羨ましく思えた。
「それより、マトイ君。一つ、お願いあるっすよ」ノニールが、不意に俺に話しかけてきた。
「俺に?」俺が自分の顔を指さした。
ノニールの隣で、レティアがモジモジしていた。
彼女が、ノニールに言わせているのだろうか。
「マトイ君、僕らのパーティに入らないっすか?」
「パーティ、この後もってか?」
「そうっす!今、勇者レティア一行は絶賛メンバー募集中っす」
「ま、マジですか?兄貴、やったですね」
そばにいたダッツが、俺をなぜか祝福しているようだ。
だけど俺は、隣のサラをちらりと見ていた。そのまま、難しい顔をしていた。
「そうは言ってもな。俺は、あまりサラと離れるわけには……な」
俺は言葉を濁した。一緒になったサラを、置いてどこかに行くつもりはない。今日のこともあったし。
不機嫌そうな顔でサラは隣で、さっきから顔を赤くしてビールっぽいものを飲んでいるが。
「もちろんサラさんも、一緒にどうっすか?」軽いノリでノニールが、声をかけた。
「レティアは、どこを……目指している?」サラが口を出す。彼女は、顔がかなり赤くなっていた。
「あたしたち、具体的に決まっていないけど……地図的にはアルカンテね……」
レティアの一言を聞くと、サラは空になったグラスをドンと置いていた。
少し赤くなった顔で、サラはじっとレティアの方に身を乗り出していた。




