040
いろいろあって、夜になっていた。
村の酒場は、いつの間にか打ち上げ会場になっていた。
テーブルには、食事が次々と運ばれた。
テーブルを囲んで俺とサラとダッツ、レティアとノニールがテーブルを挟んでいた。
レティアはちゃんと鎧を着用しているが、金のビキニ鎧で相変わらずセクシーな格好だ。
あれ?ノニールの隣に、一人見慣れない男もいるな。
「しかし、これでラオルもしばらく動けないわね」
「そうそう、万事解決っす」
「あんたは、何もしていないじゃない」
レティアとノニールが、俺の前で会話をしていた。
ノニールは、完全にビールっぽい茶色の飲み物を飲んでいた。泡も出ているし。
「それにしてもレティア様が、ラオルの前で脱いだとか……見たかった」
「バカっ、見世物じゃないわよ!」レティアは、赤い飲み物が入ったグラスを持っていた。
「彼に聞いたすっよ」
ノニールの隣は、普通の村の人だ。
若くもないが、老けてもいない。筋肉質で、少し太めの村の青年がそこにはいた。
彼はサラとダッツのにた通路の奥で、人質の解放をしていた。
ラオルが倒れた後に、彼とは初めて俺は会ったのだが。
「彼って、サラ!彼と一緒にいた、みたいだけど……」
俺の席の隣には、白いローブ姿のサラがいた。
手には、ノニールと同じビールっぽい飲み物を持っていた。
泡が出ている飲み物を、ガブガブと飛んでいた。
「はい、私に依頼をしてくれた人です。シェイゾさんです」
「シェイゾだ、よろしく」青年の男は、ややぶっきらぼうに立って挨拶をした。
幼女に、ビキニ鎧の女、アロハの男、狼頭の男に、グリゴンの俺らの中では彼の存在はすぐに埋没してしまう。
個性ある五人の中で、一番大きな体の俺は当たり前のように疑問を口にした。
「サラ、どうしてあそこにいたのだ?」
「依頼があったからです。行方不明事件と『獣協会』に、繋がりがあったですから」
「まあ、そんなところだ」依頼したシェイゾという青年が、サラに頼んだようだ。
「サラに?なぜ?」
「旅医者なら、この辺境に来るまでに強い仲間がいると思ったから頼った」
「でも、レティアさんが村長の依頼で動いていてマトイさんまで連れて行くので……ひどいですよ」
サラはそう言いながらも、ノニールに負けじと茶色の飲み物を一気に飲み干した。
「私だけなら弱いし……そこで山小屋のダッツさんにお願いして、アジトに向かったのです」
「へえ、そうなの。でもかなり早く来たわね」
「アジトまで三十分ぐらいでしたし、山小屋も離れていませんし。
そんなに、ここから遠くはなかったですよ」
サラは再び、茶色の飲み物を注文していた。レティアが、気まずそうな顔を見せていた。
サラは俺の方を見ては、頬を膨らませていた。
「マトイさん、それより私に言うことありますよね?」
「サラ……ごめん」俺は頭を下げた。
「私だって、鬼じゃないから厳しくは言いませんけど……でも勝手に行かないでください」
隣のサラは、俺の大きな腕を掴んできた。
その顔は、弱々しく今にも泣き出しそうだ。
「ホント、悪かった」
「心配……しちゃうじゃないですか」
「サラ……」俺は隣の少女の俯く顔を、見ていた。
顔が赤くて、目には今にも涙が溢れていた。
俺の手をギュッと握っては、ゆっくり顔を上げていた。
「サラさん、大丈夫っすか?」
「えっ、ああ……ごめんなさい」
ノニールの言葉で、思わずサラが手を離した。
俺も手を離されたが、胸のあたりがムズ痒い。
「でも、今回はサラさんのおかげで助かったっす。君が本当の勇者っすね」
「そうだな、助かった。ありがとう、サラ」
「私は……何もしていません。ほとんどダッツさんですよ。
ダッツさんは、猟師さんだから弓矢上手ですよ」
「サラさんに言われては、頑張った甲斐があったぜ」
ダッツは照れくさそうに、狼の頭をかいていた。
「なあ、『獣協会』ってなんだ?サラも知っていたようだけど」
「私も、彼らのことは知っています。
獣化病を研究している組織ではあるのですが、医師会でもあまりいい噂は聞きません」
「そうか……」
「サラも同じなのね」レティアが、突然身を乗り出してきた。
「それはそうと、マトイさん。最後に、何かを拾いませんでしたか?」
「え?ああ。これか。ラオルを倒して拾ったのだけどな」
そう言いながら、俺は茶色な袋に入った赤い固形物を取り出していた。
まるで薬のような固形物は、俺が預かっていた。




