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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
一話:『纒 慎二』とグリゴン
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004

ダッツの拳が、ズシッと俺の大きな背中を捉えた。

マント越しだが、ダッツの迷いがない力を込めた一撃だ。

背中で受け止めた俺は、サラとダッツの間に巨体を割り込ませた。

驚いたサラが、心配そうな顔を見せて俺の方を振り向いた。


「だ、大丈夫ですか?マトイさん?」

「平気だ、俺の体は丈夫なのが取り柄だ」

目が赤いダッツは、すぐに次の拳を突き出してきた。

彼からは、殴ってしまった後悔が感じられない。動物のような本能的な敵意だけだ。

それでも俺に、ダメージはなかった。痛みそのものを全く感じない。

全身で、サラをかばいながらダッツの攻撃から守っていた。


「そんなことより、あの薬を飲んでください!今のあなたは、少し興奮しているだけで……」

「ダメだ……もう俺はダメらしい」目を赤くしながら、ダッツはそれでも俺の背中を殴り続けた。

「生きるのを、諦めないでください!」

俺に守られているサラが、ダッツに向けて叫んだ。


「あんたは医者だろ。ここであんたに会えたのは……運命か……

あんた……俺を殺処分(ビーストアトラティ)してくれないか?」

その言葉はダッツが、心の底から放った叫びようにも聞こえた。

殴るのをやめたダッツは後ろに退いて、頭を抱えて苦しみだした。

相変わらず、目は赤い。狼の頭で苦しんでいた。俺も後ろに振り返って、苦しむダッツを見ていた。


「私は医者で、医者は人を救うのが仕事……」

懐からさっきの薬を取り出して、ダッツにゆっくりと近づくサラ。

悲しそうな顔で、苦しむダッツを見ていた。


「特定の人間しか……殺処分を……ダメ。

俺は……唯一無二の友を手にかけ、罪を犯した。だから……バチが……」

「ダッツさん、正気を持ってください!自分が人間だと思って、落ち着いてください」

悲しそうな顔で、しゃがみこんだダッツに近づこうとした。

「死んで逃げようなんて、卑怯なヤツだ」

サラを守る俺は、苦しんでいるダッツを見て口を開けた。


「ううっ、お前に何が……ウウアッッ!」

狼の頭を抱えながらも、ダッツはゆっくりと立ち上がった。

ダッツの目はずっと赤い。赤色灯のように相手に危険を知らせるように、赤く光っていた。


「ダッツさん、落ち着いて。今のあなたは落ち着くべきです」

「ううっ、ダメだ殺して……くれ」

「あなたは……」サラは苦しむダッツに近づく。

「ダメだ、サラ!」

そう言いながら俺は、横から前に出て行くサラを丸い右手で振り払った。

小さな体のサラは、巨体な俺の手ではじかれてバランスを崩した。

そのままドア近くの床に、尻餅をついてしまう。


「今のこいつはダメだ、あんたも教えてくれたんだろ」

「なぜ……」

「こいつは、完全に意識を失った」

俺がそう言った瞬間、ダッツが再び俺の顔に右ストレートを放った。

そのストレートは、狼のような殺気を放った一撃だ。

ダッツの放った威力の高い拳は、俺の右頬にしっかりとめり込んでいた。

放ったダッツは、不敵に口元に笑みを浮かべていた。



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