036
敵は三人、最もラオルは直接仕掛けるタイプじゃない。
魔術師タイプなので前衛に、鷲頭とネズミ頭を前に出す。
俺は鷲頭を相手にし、レティアはネズミ頭と向かい合っていた。
このネズミ頭は、ノケモンのブルーマウスのような可愛いものではない。リアルなネズミだ。
武器は持っていないが、鷲頭の嘴が鋭利で長い。
あの嘴は、凶器として使ってくる鋭さがあった。
俺より先に、鷲頭が俺の体に向かってきた。
無論、嘴で俺をつついてくる。反応が遅れた俺は、大きな胸で嘴を受けることにした。
刺さったが、針で刺されたぐらいの痛みしかない。
首を鷲頭は何度も振りながら、一生懸命攻撃していた。
だが、チクチクするだけでダメージはない。ひるまずに、鷲頭が攻撃を続けてきた。
(頭の中では……《たたく》を選択)
迷うことなく、俺は右手で鷲頭をひっぱたいた。
俺の目の前にいる鷲頭は、猛スピードで来る俺の大きな右手を避けられなかった。
筋肉質の鷲頭の体が、軽々と吹き飛ばされて洞窟の壁に叩きつけられた。
生死はわからないが、血はダラダラと流れ出ていた。
俺の一撃で、気を失っているようだ。全く動かなくなった。
「さすが、獣の子」ラオルが、俺に向けて乾いた拍手をした。
「その言い方、やめてくれないか?」
「やはり、その力、その大きさ。
是非とも、我のモノにしたいですね。ええ……したいですとも」
後ろの方に下がっていたラオルは、両手を前に突き出す。
突き出した掌を広げると、青というか紫色の球が現れた。
大きさは、野球のボールぐらいだろうか。
「欲しい、獣の子を……我が手に『ライジングボール』」
ラオルの手に作られた紫の球が、俺にめがけて飛んできた。雷の玉だ。
猛スピードで向かってくる雷の玉が、大きな俺の体に当たった瞬間に雷が見えた。
「マトイっ!」横で戦うレティアが、声をかけてきた。
大きな雷が爆発した瞬間に、電気が駆け巡った。全身を稲妻は走っていく。
バチバチと、音はスゴイがその稲妻は体を駆け巡ってやがて消えていった。
だけど巨大な体の俺は無事で、ダメージもない。全身が軽い痒みが、あるようにヒリヒリする程度だ。
だが、ラオルは俺に攻撃しても余裕を見せていた。
まるでこうなることが、分かっていたかのような顔をしていた。
「おお、素晴らしい!」
「野郎に褒められても、全然嬉しくないな」
俺はレティアの前で、かばうように仁王立ち。
「これは、これは、いかかですか?」
次々と、紫の球を発生させた。
だけど、それは俺ではない。隣で戦っているレティアの方に、玉を向けていた。
「くそっ、そっちかよ」俺はレティアに向けられる玉を、巨体で短足を走らせて割り込む。
ラオルは、そのまま紫の玉をレティアの方に向けて放ってきた。
だが、それを巨体の俺が全部受け止めた。
紫色の球は全弾命中し、弾けて電気を放っていた。
それでも全く表情を変えずにラオルのすぐ前で、俺は立っていた。
「汚いことをするな」
「素晴らしい、獣の子。我の攻撃を、全て喰らっても効いていないとか。
まさに基地外の強さだ、これはいい、いいですぞ」
攻撃を全部防がれたのに、ラオルの表情は笑っていた。
「俺は、お前のモノにならない」
「獣の子……あなたは何も分かっていない。あなたはいずれ、そこの勇者に殺される」
「それでもお前を信用できない」
「このように……」
ラオルは、右腕をダランとさせたかと思うとすぐに体の真横に出した。
ブツブツと口が動いていたラオルは、右腕にはネズミの紋章が出てきた。
俺の後ろでは、レティアはネズミ頭と戦闘中。
勇者のレティアが優勢で、ネズミ頭は明らかに疲れが見えていた。
前を向いていたレティアが何かを感じ取ったようで、距離をとった。
次の瞬間、ネズミ頭の動きが止まった。俺の前のラオルのそばに、紋章が見えた。
その紋章を、ラオルが握りつぶしたのだ。
止まったネズミ頭は、それと同時に体が赤くなった。そのまま体ごと爆発した。
「えっ?」盾を構えたレティアは、驚きが止まらない。
ネズミ頭が、爆発をして爆風が巻き起こった。
盾を構えたレティアは、爆発に巻き込まれることはなかった。
「な、なんだ、これは……」
「これが現実、獣の末路」ラオルが俺の前で、怪しく笑っていた。
「お前が殺したのか?」
「そう。だが……あなたは勇者といるということは、あなたの身にもいずれこのようなことが起こるのですよ」
「ますます嫌になる奴だ……」胸糞悪い男だ、ラオルという魔術師は。
背中を向けてネズミ男と戦っていたレティアも、急いで俺の方に駆け寄った。
「そうね、あたしも同感よ」俺のそばでレティアも剣を構えて、盾を持っていた。
俺とレティアの前には、ラオルが怪しそうな顔で微笑んでいた。




