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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
三話:『纒 慎二』と獣協会
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034

罠にかかったレティア一行は、三人から二人になった。

レティア前、後ろ俺という隊列に変わっていた。

ランタンをもつビキニ鎧の勇者と、ノケモンのグリゴンという奇妙な組み合わせで洞窟内を進む。

さっきの部屋で受けた罠で、レティアがボーッとしていた。


「あの、レティア」前の元気ない勇者に、俺は声をかけた。

「なによ?」

「大丈夫か、少し休んだほうが良くないか?」

「平気よ、あたしは」俺に言われて元気よく進もうとするが、すぐに元気がなくなった。

元気は二、三分ぐらいしかもたないようだ。


「レティアさーん」

「う、うるさい、大丈夫だから!」

「落ち着け、ここはアジトだろ」

俺は叫ぶレティアの口を、なんとか押さえ込ませた。

これでも俺たちは、現在誘拐犯と思われる賊の洞窟内に潜入しているのだ。

誰とも洞窟内で会っていないけど、潜入している以上は静かにするのは当然だ。

なんというか、この勇者は危なっかしいな。大丈夫だろうか。


「一応、俺たちは隠密行動しているんだろ」

「あっ、うん」俺の返す言葉に、元気がなく返すレティア。

魔力がなくなって、力が出ないのはよくわかった。

なので、俺が隊列の前に出た。


「少し休めよ」

「マトイ……あたしは平気」強がるレティアをよそに、俺がランタンを奪う。そのまま持って前を歩く。

レティアはあまり抵抗する様子もなく、素直に俺に従っていた。


「疲れているんだろ。魔力がなくなって」

「魔力は二、三日寝れば回復するわ。それにあたしは、剣も強いし問題ないわ」

レティアの腰には、剣がぶら下がっていた。

剣の柄の部分も、豪華に装飾が施された剣だ。


「なあ、レティア」

「なによ?」

「まあ、例えばなんだけど……お前の仲間に、シーフの仲間といかいないのか?」

RPGのお約束でもある単語を、俺はここで言ってみた。


「いるわけないじゃない……いたけど」

「いた?」

「元々の仲間にいたのよ。だけどあたしのせいで、いなくなった」

「いなくなった、ねえ?」

「仲間が欲しかったのよ、あたしたちは勇者でしょ。

この世界は平和だけど、勇者は危険な相手もしないといけないから」

「ふーん、例えば?賊とかか?」

「賊なんて、生易しいものじゃないわ!」

レティアの顔が、険しくなった。


「一つ思ったのだけど、あの罠……魔力を消滅する罠。

あんなものが、賊の中にあるのはおかしくない?」

「そう言われればそうだな」

「もしかしたら……これから戦う相手は、賊なんかじゃない可能性も高いし何より……いえ、ごめんなさい」

レティアは、なにか思い当たることがあるようだ。


「なにかあるのか?」

「この賊の首謀者に魔法使いがいるとか……例えば『獣協会』」

「『獣協会』?なんだそれは?」

「あたしたちが、追いかけている組織の名前。

この組織は獣化病を表では研究しているけど、本当は違うの」

「獣化病を研究するって、医者みたいなのか?」

「医者とは違うわね、強いて言えばサラと真逆の立場かしら。

サラのような医者が、医術で獣化病に向き合う存在。

獣協会は、魔法で獣化病に向き合う存在。まあ『獣協会』は悪い噂があってね」

「悪い噂?」

俺とレティアが前で喋りながら歩くと、道が突然二本に割れていた。

右と左の二手に分かれていた。


「また道が分かれているな」

「どっちか、分かる?」

「左には、何か獣臭さを感じるな」

俺は直感的に、左の道から何かがを感じた。

ぼんやりとしたものだけど、野生の勘ははっきりと左を示していた


「野生の勘ってやつね。とりあえず、左に行ってみましょ」

「だけど、俺が前に行く」

レティアを後ろにして、俺が前に出た。

ランタンは後ろのレティアがもっているが、こちらはそれほど暗くない。

左の道を進むと、徐々に明るくなっていくのだ。青い光のようなものが、ぼんやりと先に見えた。


「確かに何かいそうね」レティアも、腰の手に剣をかけていた。

魔力の消失によるダメージは、今はだいぶ回復していた。

だけど俺は、何か不思議な予感がしていた。


(何かが引っかかる……何かが)

それでも、前を歩く俺は立ち止まらなかった。

まもなくして通路は、大きな部屋に変わった。その部屋の下の方から、青い光が見えた。

部屋の青い光の正体を見た瞬間に俺は、思わず全身の茶色い毛が立った。


(魔法陣……かよ)

青く光るそれは、地面に書かれた魔法陣だった。

サラに出会う前、見たことがある魔法陣。

俺が寝かせて、下に書かれていた魔法陣。

それがここにあったので、自然とため息が出てしまった。


俺が唇を噛む中、横に居たレティアが気配を感じて剣を構えた。

まもなくして、俺の前に俺が見た過去が現実となって現れた。


それは、黒いローブを着た男だ。

肌が色白で、全身真っ黒。まるで死神のようなアイツが、この場所にいた。


「ようこそ我が楽園へ」

俺の頭の中で複雑な感情が、いくつも蘇った。

後悔も、恐怖も、安堵さえあった。

だが一番の感情は、「生きていたのか」という純粋な嫌悪の感情だった。



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