032
村を出発してから三時間後、太陽がどんどん上がっていく。
俺とレティア、ノニールの三人は森の中で彷徨っていた。
先頭を行くのは、リーダーと自称するレティア。
勇者のレティアが地図を見ながら、俺とノニールは後ろからついていく。
それにしても森の中は、木ばっかりで迷うな。
この木の形は、さっきも見たような。
「なあ、そのアジトってそんなに遠いのか」
俺が後ろから声をかけると、ビクンとレティアの背中が動いた。
「ま、まあ遠いんじゃないかしら」振り返るレティアは、何故か笑顔だ。
「そうか」
「それにしても、この木ってさきほど見たっすね」
ノニールが、周囲を見ながら言ってきた。
「え、ええ……そうかもしれないわね」
「なんか、動揺していないか?」
「いや、してないわよ。してないから」
女勇者は怪しい挙動で、前を向いて地図とにらめっこ。
困惑している女勇者に、俺はトドメとなるような言葉を発した。
「もしかして、迷ったのか?」
「え、えと……大丈夫だから」食い気味に言い返した。
「その洞窟の場所は、話だと一時間ぐらいとか言ってたっすね」
ノニールが、容赦なく爆弾発言でレティアを困らせた。
「え、違うのよ。いろいろあって」
地図を見たレティアは振り返り、顔を赤くして俺をなぜか睨んでいた。
「し、仕方ないじゃない。初めて行く場所なのよ!」
「わ、わかったわかった」抑揚ない声で、俺は返した。
半泣きしそうな女勇者を、これ以上責める気にはなれなかった。
「それじゃあ、ちょっと地図を見せてっす」
ノニールはすかさず、レティアから地図を奪い取った。
地図を大きく広げたノニールの隣で、俺も見てみた。
(こりゃ難しいな)
地図には、森がずっと広がっているのが見えた。
目印になりそうなのは、沢のような小さな川ぐらい。
そんな川らしきものは、まだ見ていないな。
地図を見ながら、ノニールは太陽の位置を見比べていた。
「分かる?」
「これ……多分、こっちっすね」
レティアが心配そうに見る中、落ち着いた様子でノニールが地図をもってドンドンと先に進む。
早歩きの彼に、俺とレティアが迷子にならないように着いていく。
「なあ、大丈夫なのか?」隣のレティアに声をかけた。
ノニールはドンドン、迷うことなく進んでいく。
「あたしよりも、ノニールはしっかりしているわ」
「そうか」俺に言ってきたレティアが、前にいるノニールを見ていた。
地図を見ながら軽快に進むノニールを、小走りで追いかける。
歩幅を合わせながらレティアが、俺の方を見ていた。
「マトイは、旅をしてどれぐらいなの?」
「俺?そうだな、三日ぐらいか。サラに会う前は、変なところにいたから」
「そう、じゃああたしの方が先輩ってわけね」
「よろしく頼むよ、先輩」
「うむ、よろしい」
レティアは、胸を張っていた。確かにレティアの胸は大きい。
金色の胸当ても、かなり大きいものだ。
「そういえば勇者って、魔法使えるのか?ノニールみたいに」
「当たり前でしょ」
「レティアの魔法って、どんなだ?俺との戦いの時に、使っていなかったけど」
「見たい、ねえ、見たい?」
俺の言葉に自慢げに、うざくレティアが俺に迫ってきた。
俺は、「ああ」と適当に返事をした。
「ふふん、残念でした。勇者の魔法はね、簡単に見せるものじゃないのよ。
それに魔力も大量に使うしね、むやみに使うもんじゃないわ」
意地悪く言ってくるレティア、なんか無性に殴りたくなってきた。
「あったっすよ、レティア様っ!」
そんなやり取りをしていると、地図を持って前を歩くノニールが前を指差す。
指をさした先に、沢らしき小さな小川を見つけた。
「あら、じゃあこの辺りに……」
「あるようだな」
沢を渡った先に、不自然な岩がいくつも見えた。
確かに、少し遠くには穴らしきものも確認できた。
「どうやらここで、間違いはないっすね」
「デカしたわ、ノニール!」
するとノニールに変わって、手柄を取るとウニ前に出てくる女勇者。
足のひざ下ほどしかない水を、バシャバシャと跳ねて小走りに岩へと向かった。
先を走るレティアに、俺とノニールはゆっくりついていく。
次第に岩の近くの穴が、大きく見えてきた。
森に隠れるようにある洞窟を、レティアが誇らしげに指をさしていた。
「さあ、あの洞窟に行きましょ!」
胸を張りながら、勇者レティアが先頭で洞窟に入っていく。
「ノニールも、大変だな」地図を持っていたノニールが、地図を背負う袋にしまっていた。
「ええ。まあウチの勇者様は、ああいう人っすから」
苦笑いをしたノニールと一緒に、俺は洞窟の中に入っていった。




