031
翌朝、俺はテントの中で起こされた。
テントに来たのはノニール、彼に起こされて俺は大きな体を起こす。
俺のベッドの隣には、サラの姿があった。かなり疲れたようで、可愛い寝息をたてて熟睡していた。
さらに反対側のベッドには、ダッツがもういない。
支度といっても体だけ行けばいいらしく、疲れて眠っていたサラの寝顔を見ながら俺はテントを出た。
ノニールに連れてこられたのは、昨日戦った広場。そこには、勇者レティアが仁王立ちをして待っていた。
足元には、大きな三つの袋が置かれていた。
朝というか、まだ空が薄暗い。真っ向な村人は、ほとんど歩いていない。
「おはよ」テンションは低く、俺がレティアに挨拶。
「元気ないわね」
「俺は、眠ることが得意なんだよ」
「その特技を捨てなさい」拗ねた顔を見せて、重そうな背負袋を俺に指差していた。
「なんだ、これは?」
「仕事の必要道具よ」
渡された袋の中身を、俺は確認した。
松明に、ロープに、石がいくつか。保存食のパンも入っていた。
「これだけ必要道具があるのに、何をするんだ?」
「昨日、村長のところに行ったのを覚えているかしら?」
「ああ、挨拶はしたな」昨日、温泉のあと村長に会った。
俺が見た村長は、多少気品があるだろうが普通の老人に見えた。
ただ大柄でレアな熊の巨体を持つ俺は、出会ってすぐに遠ざけられた。
結果、レティアと村長が話をして俺は外で待たされるハメになったが。
「実は村長の話で、あたしたちは洞窟に行くことになったのよ」
「え?」いきなり洞窟とか言われて、意味がわからない。
「どういう意味だ?」
「この村の誘拐事件の話は知っているかしら?」
「なんか来る前に言っていたな」俺は聞き返した。
「そうよ、このラナジー村には最近、行方不明事件や誘拐が起きているの。
若い人も年老いた人も、突然いなくなっているの」
「それは、初耳だな。だが老人の徘徊はよくある話だし」
「被害者はこの一年間で、二十三名。年齢帯は五、六十代が多いけど若い人間もいる。男女比はほぼ互角。
そこで、彼らを誘拐するある組織を知ったのよ。それが盗賊団よ」
「盗賊団?あまりいいものじゃなさそうだな」
「この盗賊団、いろいろ手広くやっているみたいで人身売買をやっているみたい」
「老人なのに?」
「人はタダの資源よ。それに辺境の老人なら、いなくなっても国が動くほどの大事にはなりにくい。
この村は大きクはないから強い自警団もないし、賊はやりたい放題ね」
「そういえば、前に襲ってきた獣人と何か関係が?」
「あるかもしれないわね、それにそれはあたしの目的のヤツとも合致する可能性がある」
「目的?」
「まあ、その話は置いておくっす。
僕ら勇者は盗賊団が退治するのが目的っす。
アジトらしき場所も、目星がついたっすよ」
ノニールがレティアの言葉を遮るように会話に入ってきた。
「アジトねぇ、どこだよ?」
「洞窟よ。この町の南の方に、洞窟があるわ。地図ももらったから大丈夫よ」
難しい顔で、俺に淡々と説明するレティア。
隣で目を細めてノニールが、そんな彼女を親のように見守っていた。
要はこれから誘拐犯退治をするから、来いということらしい。
「あとは、何か質問あるかしら?」
「この仕事の報酬は?」
「お金は前報酬で、4000ゴルダ。成功報酬は6000ゴルダ。
元々これはラナジー村から、あたしたちが依頼を受けたの。
ただ人員不足だし、あなたの報酬はあたしが雇い主でいいかしら?」
「まあ、いいだろう」
とりあえず、金は手に入れておきたい。金の単位は、どれぐらいの価値があるかわからない。
一文無しの俺は、この仕事を拒む理由はない。それに、俺の体がどんなことをできるのか知っておく必要もある。
いつ元に戻れるかわからない以上、この体のできることを理解する必要もあった。
「ほかに、何かあるかしら?」
「この仕事は、どれぐらいかかるんだ?」
「そうね、洞窟は地図だとだいたい三十分から一時間。洞窟内は、どれぐらいの規模かしらないけど。
早朝から奇襲かければ、順調に行けば午後には終わる予定ね」
「了解した」思いのほか、拘束時間は短いようだ。
「それじゃあ、ほかに何もなければ行きましょうか」
「行きましょうっす」ノニールが能天気に声を上げた。
「あと、このパーティのリーダーはあたしだから」
最後は自慢げに、レティアが俺に主張してきた。




