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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
二話:『纒 慎二』と勇者一行
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ラナジー村のほぼ外れに、一軒の酒場があった。

昨日は、暗くて明かりもないのでよく分からなかった。テントからそのまま酒場に、ノニールが連れてきた。

俺は未成年で、現実の世界(つまり人間の姿の俺)で酒場に行けば百パーセント身分証提示が義務つけられた。

このグリゴンの間抜けな熊の姿だと、どうやら未成年扱いではないようだ。

いや酒の法律が、この世界にあるとも思えないが。


めでたく本日、人生初の酒場デビューを異世界で果たしたわけだ。

朝ということで、ほとんど客のいない酒場の個室に案内された。

個室には、派手なビキニの鎧を来た勇者レティアが待っていた。

ノニールと、三人でテーブルを囲むことになった。


「ここでの話か?わざわざ個室も借りて」

「借りたのは、ここだけではないわ」

勇者レティアが、テーブルの上にある飲み物を飲んでいた。

なんか赤い液体のようだが、ワインだろうか。


「で、俺になんの用だ?」

「興味があるっすよ、マトイ君。大きな大きなその体に」

ノニールは、怪しげに笑ってみせた。

ニヤニヤと笑いながらノニールが、俺の体をジロジロ見ていた。


「な、なんですか?気味悪い」

「気味悪いのは『纏 慎二』、あなたの存在よ!」

レティアに、俺はズバッと言ってきた。彼女はずっと、俺を警戒しているな。


「ごめんなさい、ちょっと誤解をした言い方をして」

「僕の主人は、結構言葉きついっすからね。

若気の至りとして、許してやってくださいっす」

「まあ、サラも俺の姿はかなり珍しいと言っていたからな」

俺はノケモンだ。そういえば、ブルーマウス以外に他のノケモンをまだ見ていないな。


「そんな珍しいだけの俺に、一体何のようだ?」

「マトイの考えが、全然わからないわ」

レティアが赤い飲み物を飲みながら、首をひねっていた。


「『纏 慎二』あなたには、獣臭さを感じないの。

さらにあなたからは、悪意とか敵意も感じないわ」

「あんたは何が言いたい?レティア」

「あなたを試したいのよ」

「試す?」

勇者レティアは、俺を見て不敵に笑っていた。


「そう、あなたは今まで見たどの獣とも違う。

見た目が違うのもあるけど、中身も違うわ。

病になったのに、絶望感や理性崩壊を感じない獣は初めてよ」

「そうか、そうかもしれないな」

「あなたは何者?マトイ……」

「俺は俺で、お前らの言うところの獣だろう。

個室まで借りて、俺がおかしいと言いたいのか?」

ぶっきらぼうに言う俺の質問に、レティアが否定した。


「いいえ、違うわ。これからあなたを試そうと思うのだけど……」

「試す?」

「ええ、あなたはあたしの剣が反応した。危険を感じたのよ」

レティアの腰には、一本の剣が鞘に収まっていた。

一度彼女の剣の刃と交わって、俺の手には電気のようなものが流れた。


「あたしと戦いなさい」

「戦う、なんでだ?」

「あなたの腕を確かめるためよ」

「俺の腕を確かめて、どうするつもりだ?」

「あたしたちの仕事にはね、中途半端な強さはいらない。

だから本当に強いのか、あたし自身が確かめてあげるわ!」

「まあまあ、抑えてっす」

興奮するレティアに対し、ノニールが目を細めながらなだめた。

俺は二人のやり取りを、ぼんやり見ていた。


「そんなに危険なのか、仕事って?」

「当たり前でしょ、あたしたちは命を懸けてやっているわ」

「そういうものかね」

俺は、現代社会で仕事はおろかバイトの経験もない。

つまり初めて、お金をもらえることをするようだ。


「仕事内容は?」

「試すのが先よ、纏 慎二!あなたは、得体も知れない、危険な存在だから」

レティアの視線が、ずっと俺にだけ厳しい。流石に女に睨まれるのはいい気がしない。


「まあ、試すなら試してくれ」

「い、いいの?本当に?」不意に驚いた顔を見せたレティア。

なんだ、この女。素直に認めれば、逆に驚いたりもする。

コイツは、一体何がしたいんだ。


「試さないと、わからないなら遠慮なく試してくれ」

「だそうですよ、レティア様」

ノニールに言われて、レティアは少し困った顔を見せた。


「ちょっとは抵抗しなさいよ!」

「どうして?」

「いや、その……」歯切れがなぜか悪いレティア。

俺がジーッと次の言葉を待つ。

俺の前にいるレティアは、勢いよく自分の前にあった赤い飲み物を一気に飲み干した。


「わ、わかったわよ。あんたを信じてあげる。じゃあ、表に出なさい!」

勇者の少女は、突然立ち上がった。剣を持って肩を、いからせて個室を出て行った。


「ごめんっす。うちの勇者様、あれで難しい年頃っすから」

ノニールがフォローするように、俺に近づいてきた。



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