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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
二話:『纒 慎二』と勇者一行
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023

あれから二時間、俺たちは小屋から移動していた。

空は闇に包まれ、すっかり夜になっていた。

雨も既にやんでいて、雨上がりの独特の匂いがしていた。


暗くなった夜で、村にたどり着いた。

俺は顔をフードで隠し、ノニールが持っていたマントを貰って全身を隠していた。

俺の背中には、意識を失ったダッツがおんぶされていた。

無論、こちらも全身を布のようなもので隠して見えないように隠す。


「ここがラナジー村よ」

村を仕切るように木の柵を、歩いて超えていくと集落が見えた。

いくつかの篝火(かがりび)が入口を照らし、闇の中に確かに家らしき建物も見えていた。

レティアを先頭に、俺たちは一列になって進んでいく。


俺からすれば、この世界で初めて見た集落だ。

闇でよく見えないが、いくつかの家が明かりに照らされていた。

現代社会と大きく異なり、夜になればすっかり暗くなるようだ。


「へえ、村か」

「この村は、温泉が有名っすよ。奥の方に煙が立ち込めているっすよ」

そばにいたノニールが、俺に指を出した。

確かに闇の中に、煙らしきものが見えていた。


「あとは、誘拐とかも」

「ノニール、その話は他言無用よ」

レティアに言われ、ノニールが軽く頭を下げていた。

『誘拐』という単語が聞こえたんだけど、なんか物騒だな。


「レティア……それじゃあ、僕は村長に報告をしてくるっす」

「頼むわ」

村を歩いてすぐに一団の一人でもあるノニールが、列から離れて村の奥に走っていった。

静かな闇の中を、虫の声が聞こえる畑を抜けるようにレティアを先頭にして歩いていた。


「なあ、誘拐ってなんだ?」

「ああ、ちょっとこの村で事件を抱えていてね。

まあ、あたしら勇者がいるんだから心配いらないわよ」

「さすが、勇者ですね」

レティアが胸を張り、サラが彼女を褒め讃えた。いいのか、それで。


「それにしても、さすがはサラだわ。急な話なのに、依頼を受けてくれたわね」

前を歩くレティアが、大きなリュックを背負うサラに声をかけた。


「当然ですよ!人の命を助けるのは、医者として当たり前です」

だけどサラの熱量に、レティアがどこか冷めた目で見ていた。

「サラはラナジー村に、どれぐらいいられるの?」

「私も行くべき場所がありますから。いつまでもは、いられませんけど……二、三日ぐらいなら」

「一日でもいてくれるだけでも助かるわ。ここは、かなりの辺境だからね」

「あの、レティア……さん」

「どうしたの?」

「相変わらず大きいですね」背の高いレティアを見上げて、サラが言っていた。

「サラだって大きくなるわよ。ちゃんとミルクを飲んでいる?」

小さなサラと大きなレティアが、穏やかに話をしていた。

仲のいい姉妹のように、二人は和気藹々(わきあいあい)と俺の前で話す。

一番後ろの俺は、一人少し離れて歩いていた。


「何処に、向かっているんだ?」俺がレティアに聞く。

「宿舎よ、決まっているじゃない」

だがレティアは、俺に対しては厳しい。

先頭を歩く彼女は、俺の方を振り返らずにそう言い放った。


「宿舎か、お前らの宿舎か?」

「あたしはレティアよ」レティアが、やはり俺に冷たく当たる。

「じゃあ、レティアの宿舎に向かっているのか?

俺たちを、タダで泊めさせてくれるのか?金とかは……」

「全部、仕事上の契約の範疇だから大丈夫よ。

それにサラには、わざわざラナジー村に来てもらっているのだから!」

「来てもらっている?」俺が首をかしげると、隣にいるサラがにこやかに声をかけてきた。


「私は明日から、駐在の医者としてしばらくこの村に留まることになりました。

あの……マトイさんは、急いでいる事とかありますか?」

「ああ、いや、別に……これといってないが」

本当に急ぐ必要はないし、頼るところもない。無論、俺の経済力もない。

ここでサラと離れることに、なに一つメリットはない。


「それで、マトイ……」

それを聞いてきたのが、前を歩いていたレティアだ。

首をこっちに向けて、険しい顔を見せていた。


「なんだよ、まだ警戒をしているのか?」

「あたしは……何でもないわ」

前を歩いていたレティアが俺の方を振り返る。

ジロジロと俺を見ているが、その後のセリフが続かない。

レティアと俺の会話は、かなりぎこちない。


「強いの?あなた」数秒の沈黙後、開いた言葉がこれだ。

「俺がか?」

「そう、マトイ。サラのボディーガードをしているあなたは、強いのかしら?」

「俺か……そうだな。怪力には自信がある」

「そう」その後、俺とレティアの間にはしばらく沈黙が続いた。

それでも夜の村を歩く足音だけが、響いていた。

しばらく沈黙が続いた後に、あるひとつのテントの前にたどり着いた。


「着いたぞ、ここだ」レティアが足を止めた。

闇の中で大きな松明が正面に二つ、大きなテントの姿を明るく照らしていた。



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