022
女の対立は、かなり怖い。
獣よりも緊迫感がある女同士の言い合いだ。
人を救うことに、生きがいを感じて生きてきたサラ。
対して勇者の仕事として、害をなすものを倒してきたレティア。
この二人が、テーブルを挟んでにらみ合っていた。
「落ち度?」
「ええ、最近このあたりは獣人が増えてね。ちょっと物騒になったのよ」
「物騒ですか、大変ですね」
「サラ、あなたも旅をしているのだから、獣人が周囲に増えていることぐらいわかるでしょ」
「確かに、患者さんが増えていますね。それにしてもあの獣人は……」
「近くに村があるの。そこの村人が病を発症してこうなったわ。
そういえばマトイだっけ、あんたも獣じゃない!」
腕を組んだレティアは、突然俺の姿を睨んでいた。
全身が熊になったノケモンのグリゴン。間抜けな顔だけど、大きな体で威圧感があった。
それを感じたのか、サラは立ち上がって俺の前に出て両手を広げた。
「レティアさんに、マトイさんは絶対に殺させません!」
「サラ、わかっているでしょ。獣化病は治らない、マトイもいつか獣としてあなたを襲うの……」
「マトイさんは、私の患者です!私がそばにいるうちは、彼を殺させない!」
サラが目に涙を浮かべて、レティアに迫っていた。
レティアは大きくため息をついて、サラを見ていた。
「あなたは、どうしてそうまでして獣を救うことに執着するのかしら?」
「私はただ、救える命は全部救いたいです!」
「あなたは真っ直ぐで綺麗すぎるのよ!獣なんて所詮は、獣でしょ。
いつかは人を襲うようになるわ。そうなっては遅いのよ、獣は全て敵」
「でも、今の彼はステージ3です。現在の彼を、傷つけていい理由はどこにもありません!」
「わかっているわよ。ステージ3の彼を殺す権利は、勇者にも医者にも無いから」
レティアの言葉に、サラがゆっくりと椅子に座った。
彼女はどうやら獣に対して、根強い敵意があるようだ。
「にしても、随分と興味が湧くっすね。全身の獣化っすか?しかも熊、見たことない姿っすね。
おまけにちょっと間抜けな顔をして……いやいや、そういうわけじゃないっすけど」
ノニールがやや下品な笑いを見せつつも、俺をジロジロ見ていた。
大きな俺の姿は、どうしても目立つ。それは、好奇な目に晒されても仕方がない。
「サラ!それよりもあなたに会えたのだから、話しておきたいことがあって」
「レティアさん、なんですか?」落ち着いたサラが、レティアを見ていた。
「実はあたしたち、『ラナジー村』に拠点を置いているけど……あなたに手を貸して欲しいのよ」
そう言いながらも、レティアは大きな胸の隙間から一枚の紙を取り出していた。
なんでそんなところに紙を入れている、と突っ込みを入れたくなるがここはあえて突っ込まないでおこう。
「これは……」レティアの紙を受け取ったサラが、じっと見ていた。
「村長からの招待状、受け取ってもらえるかしら?」
レティアは、腕をテーブルの上で組みながらサラを見ていた。




