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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
二話:『纒 慎二』と勇者一行
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021

俺は、このポニーテールの女と面識がない。

黒髪をなびかせて、剣の先を俺の首元に向けていた。

凛とした顔で、鋭く歪みのない目で、女にしては凛々しくて勇ましい。

露出度の高い鎧を着ていなければ、威圧感さえあるだろう。


「なんのつもりだ?」

「とぼけないで、あんたも獣でしょ!あたしは勇者として、あなたを殺さないといけないわ」

「なにかの間違えだ」

「おやぁ、喋っているっすね」

俺の背後では、アロハシャツ男が怪しそうに笑っていた。


「ノニール、後ろを固めて。こいつが動いたら殺すわよ」

「とは言っても、喋っているっすよ。

いくら勇者であっても人間を殺害することは、人道的にも法的にも認められないから」

「新種なら、喋ることもあるんじゃないの?

ああいう未確認の獣は、何を考えているかわからないし」

俺に対して、剣を構えて戦うつもりらしい。

この女の勝気な性格、やはりオーラが只者ではない。


「ちょっと待て、なぜ俺がお前に狙われるんだ?」

「あなたが獣だから、それだけで十分」

険しい顔で女が、俺の方に剣を向けた。

女の剣筋が見えたのか、怖さのない俺が手で払おうとした。

だが剣の刃に俺の手が触れようとした瞬間に、電気のようなものが俺に流れてきた。


「おわっ!」

俺が、思わず剣から離れていく。

女も剣に何かが流れたのか、驚いた顔で後ろに下がった。


「なんだ、この剣が……反応した?」

「レティアさん?」

そんな時、ダッツに襲われていたはずのサラが声をかけた。

サラの前では、ダッツという狼男がぐったりと地面に倒れていた。



「なにかの間違え(い)だ」今、山小屋には五人集まっていた。

いつの間にか倒れていた一人(ダッツ)は、奥の部屋で寝かせていた。

テーブルを挟んで俺とサラ、俺らの反対側には二人の男女がいた。


一人は、ビキニのような派手で露出の高い格好だ。

金ピカの肩当てに、やはり金色の胸当て。白いミニスカートに金ピカのブーツ。

へそを出していた、ポニーテールの若い女。

腕を組んで険しい表情で、俺をずっと睨んでいた。

やはり、このグリゴンの格好が原因らしい。


女の隣にいるのは、アロハシャツと短パンをはいた男。

髪が短いが、ファッションだろうか前髪を黄色に染めていた。

にこやかな顔で、俺に手を振っていた。背中の椅子には杖が立てかけてある。

森で出会ったこの二人、かなり場違いの格好をしているな。


だがそれ以上に俺の隣のサラは、悲しそうな顔を見せていた。

「レティアさん、さっきの(獣人)は知り合いですか?」

「彼はターゲットよ。サラ……あなたに、こんなところで会うとはね」

レティアはサラの顔を見て、心配そうな顔に見せた。

俺の時に見せる目と、サラを見る目が全く違うな。


「サラの知り合いか?」

「はい、彼女の名前はコンレイ・レティアさん。職業は勇者です」

「ゆ、勇者?」

「あたしは勇者レティアよ。勇者として勇気ある行動をとったのだから」

大きな胸を張って堂々と言い放つ、勇者と言われた女。

サラには表情を崩すが、俺の時は険しい顔に変わっていた。


「なんにせよ、まずは助かりました。レティアさん、ありがとう。そちらの方は?」

「いや礼には及ばないわ。紹介がまだのようね。隣の彼は、ノニール。

あたしの仲間で、魔法使いなの」

「初めまして、僕はノニールっす。よろしくっす」

レティアの隣で、フランクに話しかけて来たノニール。

魔法使いか?なるほど、さっきの竜巻の魔法を使ったのはこいつか。

ノニールは、何やらニヤつきながら俺たちの方を見ていた。


「で、どういう関係だ?」

「僕らは、かつてサラさんに命を助けられたっす」

ノニールの言葉に、俺はすぐに納得できた。


「でも、サラ。獣はなんにおいても危険よ。この獣なんか、見たことない姿をしているし」

「レティアさん、違うんです。彼は私の仲間で……」

「俺は『(マトイ) 慎二』だ。

俺はサラのボディガードとして、パン一個で雇われている……そういうことだ」

「マトイ……変わった名っすね」ノニールが、にこやかに俺を見ていた。

「でも、そんな獣をあたしは見たことないわ」

「そうですね。私もはじめて見たときは驚いたのですが、彼はステージ4ではありません。

少なくとも3以下で、まだ調べる必要はありますが危険ではありませんよ」

「そう、医者のサラが言うなら信用できるわね」

ようやくレティアの険しい表情が、少しだけ和らいだ。


「それにしても、勇者か……」この世界は、勇者がいる世界か。

俺は勇者というのを、RPGぐらいでしか聞いたことがない。


「まあ、古い職業だから仕方ないわ」

「古い?」レティアの言葉が、純粋に引っかかった。


「数百年前の昔の世界には、魔王とかいたそうよ。

その時に、魔王を倒した勇気あるものに与えられた称号なのよ。

称号を後世に残す意味で、魔王のいない今の世の中では家柄として残っているわ」

「魔王が……物騒だな」

「どのみち今はいないっすけどね。まあ痕跡みたいなのは残っているっす」

「だけど、あんたの姿を信用していないから!」

レティアは相変わらず、俺に対して険しい顔を見せていた。


「それにしても、勇者がなんでこんなところにいるんだ?」

「仕事よ」レティアは疲れた顔で、テーブルに肘をついていた。


「仕事?なんの仕事だ?」

「今の勇者の仕事は、ご近所の防衛なの。

最もあたしたち勇者は自警団のように、地域に縛られているわけじゃないわ。

あたしはノニールと一緒に旅をしているし、行く先々のトラブル解消をしているところかしら。

獣化病になった人間を、被害が出ないように退治するのもあたしの仕事。半分道楽みたいなものだけどね」

「なるほど、なんとなくわかった」

「やはり、わかりません!」俺の理解を遮るように、サラが強く言い返した。

「なぜ、あのような酷い殺し方をしたのですか?」

サラは見ていた。ノニールの魔法で、竜巻の刃で無残にズタズタにされた狼男を。

サラの喋り声が、どこか落ち着いていてかえって不気味だ。


「これは、あたしたちの落ち度でもあるの」

レティアは強気な顔で、サラを見返していた。



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