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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
一話:『纒 慎二』とグリゴン
18/639

018

獣化病がステージ4になった人間は、人間でなくなる。まさに獣だ。

獣として医師に認定された人間は、殺すしかない。

医師が取るべき手段は、匂い玉に反応した獣を注射器内の薬品で殺すという手段。


匂い玉に吸い寄せられた狼男の背後に、サラが近づく。

匂いに反応しているのか、背後のサラに気づかない。

サラの持つ注射を握る手が、震えていた。

険しい表情で大きな注射を構え、狼男の背中に針を向けていた。

静かに、背中に刺した。針が狼男の背中に命中した。


「グオオオッ!」

苦しそうな鳴き声をあげた狼男。

サラは薬品の入った注射器の押子を、静かに押していた。

注射器内の薬品が、狼男の体に流れ込んできた。


「まずいな」俺は直感で感じた。

グリゴンというノケモンの持つ、動物的カンなのだろうか。

注射器内の薬が全てなくなり、サラが針を狼男の背中から抜く。

俺はすぐさまサラの方に、ドスドスと大きな音を立てて近づいた。


「離れろ!」俺は叫ぶ。同時に、狼男が後ろのサラをしっかり赤い目で見ていた。

ほぼ接触しているサラは、狼男の攻撃間合いにいたのだ。

狼男が爪の生えた右手を、サラの顔めがけて振り抜いた。

小さな体のサラは、後ろに飛んで狼男の爪をかわした。だけど足元は、雨でぬかるんでいた。

着地した左足が、柔らかくてバランスを崩した。

後ろに倒れそうなサラを、やってきた俺が受け止めた。


「マトイさん、助かりました」

俺の大きな体が間に合い、出ている腹がクッションになっていた。


「かなり無茶したな」

「いいえ、私が責任をもって彼を救わないといけないのですが……」

「やつに打った注射は、すぐに効くのか?」

「苦しまずに、静かに倒れるはずですが……薬がなぜか効いていませんね」

俺たちの前にいる狼頭は、倒れる様子はない。苦しい表情を見せながらも、こっちを、サラを睨んでいた。

汗をかいて呼吸は少し乱しているものの、まだまだ戦う気力は落ちていない。

サラも俺から離れて、後ろに退きながら悲しそうな顔で狼男を見ていた。


「まあ、どのみち倒せってことだろ」

「マトイさん、ごめんなさい。あなたに頼る事になるなんて」

「気にするなよ、そのために俺がいるんだろ」

サラを背中にして俺が構えるが、狼男は警戒をしていた。

手負いな上に、俺の体は明らかに大きいのだ。

本能で動く狼男も、簡単に突っ込んでくる様子はなかった。


(突っ込んできたほうが、楽なのだが)

ステージ4は、人であって人ではない。

動物と何ら変わりはなく、人間のような判断ができない。

向こうが近づかないのなら、巨体の俺が狼男との間合いを詰めた。

残念ながら、俺は動きが早くないので狼を捕まえることは難しい。


(さて、逃げるだろうか)

姿的に見ても大きさは、はるかに俺のほうが大きい。

手負いで、サラの注射も打たれているので明らかに狼男は分が悪いだろう。

俺の巨漢によるプレッシャーを与えることで、逃げてくれればそれは幸いだ。

だけど、狼男は俺が予期する行動と違う行動をとっていた。


「ワオオーッン!」

狼頭は、遠吠えをしたのだ。

顔を上にあげて、大きく甲高い声で叫んだ。

遠吠えの声が、森の中へ広がっていく。


「遠吠えかよ、やつは何を……」

「丸太小屋の方から、物音がしますっ!」俺の後ろにいたサラが、丸太小屋を見ながら叫んだ。

「マジか」一瞬で俺は判断して、好ましくない状況に変わったことを知った。


丸太小屋の開いていたドアに、ダッツという白い毛の狼男が現れた。

数時間前の状態と同じに、猫背で赤い目をして俺達に強い殺気を放ちながら。



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