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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
一話:『纒 慎二』とグリゴン
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013

ラオルを一撃で倒した俺は、この部屋……いや洞窟を抜け出した。

鎧を着た男が、怯えながらも俺を出口まで案内した。

いろいろ話そうとしたが、巨体の俺に対して完全に恐れていた。

天井の低い通路に頭を下げて歩いていくと、まもなくして俺は外に出てきた。


狭い洞窟を出ると、夜の森が見えた。だが雨がパラパラと降っていた。

雨の静かにシトシトと降る音を聞きながら、俺は夜の森を進む。

この雨の冷たさは、俺がいた世界と同じだろう。

不気味な雰囲気で、不安になったけど、それ以上に俺はショックがあった。


(獣の子、化け物……俺はどうしたらいいのだろうか?)

俺は獣だ、ノケモンのグリゴンになっていた。

この世界の人間は、鉄の鎧や魔法があるからファンタジーの世界だろうか。


だが、それ以上の言葉を俺は知ることができなかった。

俺がいくら建設的に話そうとしても、この巨体な体の迫力でどんな人間も怯えてしまう。

動物的に見て、体の大きさはそれだけで圧力になるだろう。

大きいというだけで、周りは萎縮して喋れなくなってしまうのだ。

脅しをやろうとしたが、俺はそのやり方は好きではない。

俺を裏切った、アイツみたいになってしまうからだ。


とにかく、体が異常なほどに丈夫なのは救いだ。体力的に見ても疲れがほとんどない。

いつの間にか、小雨降る森を何時間も彷徨(さまよ)って歩いていた。

やがて微かに太陽の光が見える頃、ある場所にたどり着いた。


(森を抜けたのか……)

俺の前に現れた光景に、目を奪われた。

それは木が生えていない草原の広場。さらに前には、雨がシトシト振り続けるに泉があった。


「泉か……綺麗だ」

青く綺麗な泉は、澱んだ藍色のような色ではない。曇っていても、綺麗に澄んだ青色だ。

雨雲の切れ目からかすかに覗く太陽の光を受けて、微かに輝いていた。

俺はドスドスと大きな音を立てて歩く。

泉の前でしゃがみ、両手をついて泉の水に写る自分の顔を確認した。


(やっぱりグリゴンだ)

短い手足を見たことはあるが、顔を見て改めて自分がノケモンのグリゴンだ。

目が細く、口が大きく、鼻も大きい熊のようなノケモン。人間の要素が何一つない。

自分の姿がこうして変わったことを突きつけられると、少なからずショックはあった。


(俺はこんな世界で、どうすればいい?こんな姿の俺を、誰が面倒見てくれるのだ?

本当に俺は、アイツらのいう『獣の子』じゃないのだろうか)

巨大な熊の姿は、明らかに目立つだろう。

洞窟内での人間の男どもの反応は、決して間違っていない。


それでも俺のこの姿は、明らかに違う。

熊人間(グリゴン)のこの姿は、どう見ても異常でしかない。


そんな時に泉の奥の方で、物音が聞こえた。

泉を挟んで奥には、なにかゴソゴソと動いているものが見えた。

よく見ると奥には、黄色いキャンプ用のテントが立っていた。


(なんだ、テントか)

俺が注視していると、テントの中から一人の白い服を着た人間が出てきた。

遠近法の影響か、白い服の人間はかなり小さい。

泉の奥の人は、少し離れた泉の前でしゃがんでいた俺を見つけた。

見つけるなり、こっちに向かって大きく手を振っていた。


(どうする?奥の奴が、こっちに向かってくるぞ)

普通の体ではない俺は、体を隠すことは難しいだろう。

顔を上げた俺が考えていると、白い人は小走りでこっちに近づいてきた。


次第に大きいく見えてきた白い人は、栗色の髪の長い人間だ。

目をたるませた可愛らしい顔の女で、白く大きいコートに白いミニブーツという姿だ。

笑顔で手を振りながら俺に近づく女は、俺の姿を確認できる三メートルほどまで走ってきて不意に立ち止まった。


「あっ……」やっぱりと思った。

立ち上がった俺の姿は、隠しようがない巨大な熊の姿だ。

傍から見れば、ただの熊にしか見えない。

なによりここは森の中。童謡で聞いたことある、あんなシュチュレーションだ。


少し警戒した女は、三メートルほど距離を保ったまま大きな声を上げた。


「人間の人ですか~?」甘くかわいらしい女の声だ。

「見た目は熊だけど、俺は人間だ」

「そっか。じゃあ、あなたは運がいいですね」

一つ頷いてすぐに女は、小走りで俺の方に近づいてきた。

女は近づくなり哀れみの顔に変わっていく、恐れや恐怖を全く感じない。

「運がいい」と言っていた小さな女に対して、俺は逆に警戒して身構えた。



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