↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/8

12月20日(水)〈啓輔〉

朝8:00。

今日も彼の前の客が列から離れ、見慣れた顔が現れる。


「あ、あのっ…今日も寒いので…ココアで」


うーん、今日も可愛い。少し照れているのがまた可愛い。


昨日もメッセージを読んでくれたことを伝えようとしてくれたのかな、と思うと胸が暖かくなる。


それならば期待に応えなければ、と意気込んでペンを取り出す。今日は何を書こうかな、と考えてここは店員らしいことを一つ書いとくか、と思い"マシュマロ入れると更に美味しくなるよ"と書いて彼に渡した。


彼は受け取ると、メッセージの書いてある所を眺めた後に明日はマシュマロも頼みます、と笑顔付きで告げ店を出て行った。


ここ2日間、お礼を言われる以上の会話が少しとは言え出来ていることがとても嬉しい。今まで2ヶ月ただカップに絵を描くだけに留めていた頃から考えるとすごい進歩だよな、と思う。


明日彼がマシュマロを頼んだらおまけしてあげよう、と決意し仕事を再開した。


***


「で、あれからどーなの例の彼とは」


シフトも終わりスタッフ専用の部屋で片付けをしている時に、同じくシフトの終わった小野が尋ねた。


「どうなのって言われても…」


お礼を言われる以上の会話をする様になったとはいえ、客と店員の関係を超えていないのは事実であり、彼が俺のことをどう思ってくれているかも未だによく分からない。少なくとも少しは気にしてくれているとは思うのだが、何せ毎回店員にお礼を言ってくれるような律儀な子だ。ただ書かれているメッセージに律儀に返事をしてくれているだけという可能性も高い。それに、男同士な訳だし彼が俺と同じ気持ちでいてくれるということは考え難い。


「とりあえず毎日メッセージ書いてるのは見てくれてるみたいで反応はくれる」


「へー今日はなんて書いたの?」


「ココアにマシュマロ入れると更に美味しくなるよって」


改めて口にしてみるとなんだかお金を払わせようと色々おススメしてくる店員のように聞こえて不安になった。そんな風に捉えられてないことを願う。


いや、明日彼が頼んだらおまけで俺が奢るつもりだし大丈夫だろう、と自分に言い聞かせる。


「いや確かに普通の挨拶みたいなのから始めればとは言ったけど。そんなメッセージじゃいつまで経っても進展なんかしないでしょ。明日で四日目なんだからもう少し積極的にいきなさいよ。」


積極的と簡単に行ってくれるが、只でさえただの店員と客という関係な上に男同士では容易くその大きな一歩を踏み出すことなんて出来ない。

それなのに、この彼女の妙な強引さと絶対に成功するとでも言いたげな自信は何処から来るのだろう。


「積極的にいきすぎて引かれたらどーすんだよ…」


もし彼がこのコーヒーショップに通わなくなってしまうなんてことになったら、これから俺はどうやって1日の始まりを感じればいいのだ。


「失敗したら慰めてあげるから。とりあえず私を信じて明日はもっと意識してくれるようなこと書きなさいよ」


だからその自信は何処から来るんだっつうの。


とはいえ彼女の言っている事も一理ある。今の距離感が心地よいのも事実だが、俺がなりたいのはそれ以上なのだ。その為にはもっと積極的なことを書かないと、彼も意識などしてくれないだろう。


結局明日のメッセージはどうすればいいんだ、と悩みながら店を出て大学に向かった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。