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プロローグ

 RPGツクーレ。

 今から約三〇年前――俺が生まれる一〇年以上も前に第一弾が発売された、ロールプレイングゲームの設定が出来るゲームソフトだ。

 俺が初めてRPGツクーレを手にしたのは六年前。

 バージョンとしては第七弾を数えていた頃だ。

 それから今日――第十二弾に至るまで、俺はPC版コンシューマ版問わずに買い求め、データを引き継ぎ、連綿と一つのゲームを設定し続けて来た。

 コツコツと没頭する俺のその姿は、賽の河原で小石を積むがごとく。


「それって死んじゃってますよねっっっ!!!???」


 最初は一つのRPGとして完成させる事を目標としていたのだが、いつしか、ゲームの設定を煮詰め、より濃密なゲーム世界を構築する事が目標と変わった。

 ゴールラインを撤廃したのだ。


「そうやって、いいじゃないか大会、とか、ドラゴン坊主、や、超村人、なんて訳の分からない魔物や職業を氾濫させて行ったんですねっっっ!!!」


 しかし、煮詰めに煮詰め、鍋が焦げ付いても火を止めなかった為に、相当にアレな内容のゲームとなってしまったかもしれない。

 それは、ゲームを設定する上で過去に設定した内容は変更しない、とのマイルールを遵守し、設定に設定を重ね続けた事に原因があると自覚している。


 ゲームの冒頭、プレイヤーキャラクター一行が冒険の旅に出る段で国王より激励を受けるイベントがあるのだが、この国王、ある程度までゲームを進めると、実は畑の案山子が逃げ出した末裔であった事が判明する。

 ……何を言っているのか、我ながら不明すぎる。


 ゲームの序盤、始まりの街周辺にはある条件を満たす事で遭遇が可能となるレアモンスターが存在するのだが、このモンスター、ある程度までゲームを進めると、実は聖小作人組合の第八席にある事が判明する。

 ……聖小作人組合とはどんな組織なのか、詳細な設定はまだしていない。


 ゲームの当初、勇猛果敢で弱き者を助ける事を信条としている、戦士、を職業としたノンプレイヤーキャラクターをあるイベントを経る事で仲間とパーティーに加える事が出来るのだが、ある程度までゲームを進めると、みみずとむかでしか装備をする事が出来なくなり、北の大地を開発しに行くと言って南の海に飛び込んでしまう。

 ……北を目指すなら北の海に飛び込め。


「畑に関係ある設定ばかりじゃないですかっっっ!!!??? ステマですか!? 創造主様は農家の回し者なんですかっっっ!!!???」


「さっきから五月蝿いな。人のモノローグに茶々を入れるなよ、女神(ポンコツ)


「ちょ、ちょっと! 女神と書いてポンコツと読むのは止めて欲しいんですけどっっっ!!! それに、創造主様は気がついていないのかも知れませんけど、全部口に出てしまっていますからね!」


「無意識に呟いてしまっていたのか。……そいつはすまなかったな、ポンコツ」


「まともにポンコツって呼ばないで下さいよおおおおおっっっ!!!」


 隣では女が一人、小学生の様に地団駄を踏んでいた。

 名前はアーパネイ。

 女神と言う立場にあり、俺が設定したゲーム世界であるジアーレの象徴でもある。

 年の頃は一七、八で俺と同等。

 白と紫に染め分けられた巫女装束に薄手の千早を羽織った装いをしている。

 男なら誰もが目を奪われよう愛らしい顔立ちには、幼さと親しみやすさが同居していた。

 どこか扇情的なさくらピンクをした髪はふわりと柔らかそうなセミロング。

 

 どれも俺が設定をした通りだ。

 

 胸のサイズもBカップ上限で間違い無いだろう。


 RPGツクーレでロールプレイングゲームを設定するに当たって、最初に着手したキャラクターはこのアーパネイだった。

 設定には当時――六年前の俺の好みがふんだんに盛り込まれている。

 それら好みは今も変わらない。


「そ、そんなにマジマジと見ないで下さいよう……」


 目を奪われがてら外見上の各設定を確認していると、アーパネイは照れくさそうに身をよじっていた。

 その仕草はとても愛らしく、思わず胸が高鳴る。

 まるで海水浴の最中に提灯鮟鱇に遭遇したかの様な――。


「それって褒め言葉なんですかっっっ!!!??? ……まったく、創造主様は」


「……創造主様、か」


 頬を桃色に染めながら抗議の声を上げるアーパネイを無視して空を見上げる。

 良く晴れた空には雲一つ無く、太陽が大小と二つあった。

 これも俺がした設定の通りだ。

 ジアーレには太陽が大小二つ、月も大小二つ。


 他、あれもこれも俺がRPGツクーレで設定をした通りである。


 俺は今、RPGツクーレで設定をしたゲーム世界、ジアーレの大地に立っているのだ。


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