逃亡の末
1ヶ月あけての更新!今回は会話少な目かもです!
水間は走った。
あてもなく、ただひたすら走った。
後ろからは桐島が楽しげな顔をして追いかけている。
水間はどこを走っているのか、今何時なのか。それを知る術はなく、ひたすらに時間が過ぎてゆく。
「水間君!逃げてばかりじゃダメだ!諦めて僕の知識の糧となってくれ!君はそうして僕の中で生きられる!ほら!死んでないじゃないか!」
「何言ってんだよ!俺は肉体的に死んでるじゃねぇか!そんなのはごめんだ!」
そう言って更に速度を上げた。
意表を突かれた桐島は少し遅れてから速度を上げる。
水間が走っていると、目の前に小さな家が見えた。
「しめた!ここに隠れよう!」と、水間は家の中に入っていく。
先ほど意表を突いた行動により、ここに入るときには桐島の姿は見えなかった。
「お邪魔します!」と言いながら水間は土足で家の中に入っていく。
家の中はボロボロで柱には傷跡が見える。
「どこか隠れられる場所はないか…早くしないとあいつが来ちまう」
水間が探していると、入り口のドアが開く音がした。
「水間君〜何処に行ったのかな〜?」
玄関で桐島の声が響く。
それを耳にした水間は絶望した。
ギシギシと廊下を歩く音がする。
水間は焦りに焦っていた。死を覚悟した
突如、水間は口元を押さえられて後ろに引っ張られた。
「静かにするんだぞ…」
水間の口を押さえている人がそう耳元で囁く。
水間のいた部屋の襖が勢いよく開けられる。
そこには桐島の姿があった。
「絶対に物音を立てるな…殺されるぞ」
水間は従うしかなかった。
桐島は部屋を見渡すと、隠れられそうな場所を片っ端から調べだした。
「まずいな…ここもいずれ見つかるか」
水間の口を押さえていた人物は近くの木片を手にし、襖の向こう側の空間、廊下に投げた。
桐島には気付かず、廊下に落ちた木片は音を立てる。
その音に反応した桐島が振り向く。
そして、その音を確認するべく廊下に出て行った。
「ふう、何とか危機は免れたな少年」
「貴方は一体…?」
「説明は後だ。とにかくここを脱出するぞ。私についてこい」
そう言って、その人物は隠れていた空間の壁を剥がした。
剥がした場所には穴があり、どうやら外に繋がっているだろうということが分かった。
謎の人物と共に穴を抜けると、そこは家の裏側だった。
無事に脱出出来た事により、水間は安堵の溜息を吐く。
「ありがとうございます。おかげで助かりました。」
「いやぁなに、私の家に突然入ってきたかと思ったらまさか追われていたとはのぉ!」
謎の人物は笑った。
すると突然、背後の家がパチパチと燃えだした。
「わ、ワシの家が燃えておる!なんでぇ!?」
謎の人物は明らさまに困惑しており、その瞳には薄っすらと輝く何かが見えた。
「やぁ水間君。こんなところにいたのか。今し方このボロ屋を燃やしたところだよ♪」
桐島は手に火をまといながら笑って現れた。
桐島は手を払い、火を消すとこちらに歩み寄ってくる。
「いやぁ、結構探したよ?燃やせば早いって気付いたのはさっき♪」
桐島はなおも笑っている。
しかし、その表情は謎の人物が次に発した言葉によって消える。
「お前が私の家を燃やしたのか……」
謎の人物は俯いたまま問う。
「あちゃー、ここは貴方の家だったか!すまない!こんなボロ屋に人が住んでいるとは思わなかった!」
桐島が煽りを混ぜた言葉を言い終わると同時に謎の人物は桐島に襲いかかる。
桐島は反応が遅れ、謎の人物の拳を顔に受けた。
桐島の顔からは完全に笑顔が消え、唖然としていた。
やがてその顔は怒りの表情となり、明らかな殺意を持ってこう言った。
「遊びはここまでだ。水間諸共お前達をここでぶっ殺す」
以前見せた炎とは比べ物にならないぐらい大きな炎を生成する。
水間と謎の人物はその熱気により、顔を腕で遮る構えをした。
「ここからは鬼ごっこじゃない。一方的な処刑だ」