尾行の果て
いつもの如く久しぶりの投稿です!
書き方が進化できたと思っています!
それではお楽しみください!
武装した人間の後を長い間クリス達が尾行する。
人間と5人の間は15メートル程の距離を空けており、これ以上近付くとクリス曰く「見つかる」との事だった。
尾行の経験がない4人を引き連れて、山という隠れ場所が沢山ある場所を、素人がやるならこれぐらいがギリギリだろうとクリスは踏んでいた。
5人に付けられているとはつゆ知らず、武装人間は人間が通るように作られた道を外れ、横にあるけもの道を歩いて行く。
「しまった!一本道だと油断した!見失う前に追い付くぞ!」
クリスがそう言うと、なるべく音を立てないように走って、武装人間が曲がったとされる場所まで足を進める。
水間達もその後に続いて足を早める。
クリスの判断が早かったのが功を成し、木々視界を遮られる前に武装人間を視認することに成功した。
その後も暫く尾行が続き、遂にはひらけた場所に武装人間は辿り着く。
「よし、お前達足を止めろ。屈んでその木に身を隠してくれ。俺が様子を見る」
そう言われた水間達は素直に従い、木に背中を預けひらけた場所から身を隠すように座り込んだ。
クリスも近くの木に身を隠し、幹から顔を少しだし、そのひらけた場所を観察する。
ひらけた場所の中央には廃屋が建てられており、外見は何かに燃やされた様に焦げている。
所々穴が空いており、そこから中の様子が伺えた。
中に複数の同じ武装をした人間がはいっているのが分かる。
クリスが観察をしているとこちらに近付いてくる武装人間が見えた。
クリスはそれに気付きサッと身を隠す。
向こうからの反応は無く、気付かれていない様子にクリスがホッとする。
クリスが水間達の方を向きかなり声を落として話しかける。
「尾行した奴と同じような奴がこっちに来ている。君たちはなるべく音を立てずに静かに隠れていてくれ。俺がなんとかする」
「…分かりました」
水間たちの間に緊張感が走る。
額からは汗が流れ、今か今かとその時を待ち続ける。
息を殺して待っていると、視界に武装人間が映る。
武装人間の手には自動小銃があり、「気付かれると死ぬ」という明確な予感が水間達に襲いかかる。
幸い恐怖のおかげで声を出さずに居られた為、武装人間には気付かれなかった。
武装人間が何の疑いもなく5人の間を歩き抜けようとした時、クリスはサッと立ち上がり武装人間に襲いかかる。
クリスは気付かれることなく武装人間の背後を取り、慣れた動きでその人間を地面に叩きつける。
突然の出来事に動揺し、人間は手に持っていた自動小銃を先程の衝撃で手放してしまい、両の腕を封じられる。
クリスは人間の持っていたナイフを抜き取り、首元に当てた。
人間は余りにも一瞬の出来事と首元に当てられた冷えた鉄の感触に声も出ず、ただひたすら震えていた。
クリスは人間に警告する。
「今からお前に質問する。大きな音を立てたり騒いだりしたら殺す。嘘をつくと殺す。黙っても殺す。分かったら返事をしろ」
クリスの異様に手馴れた動き。
そして、人を殺すことに何の躊躇いも持たない…そんな風に思わせる異常な言動と行動は水間達にさらなる恐怖を覚えさせた。
男は「はい…」とだけ言い、どうすれば死なないか必死に考えているように見えた。
クリスはそんな様子はお構いなしに質問を始める。
「先ず1つ目の質問だ。あの建物はなんだ?中で何をやっている。」
「あ、あの建物は最近見つけた物で…あの中で…隊長が何処かと連絡しあっている…」
「連絡…?それはどこと連絡している?」
「し、知らない!俺は下っ端だから隊長は何も教えてくれない!ただ俺たちに『クリスという男を始末しろ』と命令して写真を渡された…多分アンタの事なんだろ?写真と顔が同じだ…」
「その隊長って奴の特徴は?」
「腕に赤い布を巻いてある。黄色い布は俺みたいな下っ端だ…」
クリスは「そうか…」と呟くとまた質問をはじめる。
「次の質問だが…《草薙 浅葱》と言う女性を知らないか?」
「………?一体誰なんだ?その女性は…全く知らない…ほ、本当だぞ!?」
男は必死に「知らない」と言う。
クリスは考える。この男がよもや嘘をつくとは思えない。
クリスの脅しが本物だというのは幾ら戦闘素人でも察せるほどに、その言葉には重みがあった。
クリスは「そうか…ならもういい」と言い男の首を締め上げる。
男は苦しそうに悶えながら、やがて腕から力が抜けダランと地面に落ちる。
それを確認したクリスは男をそっと地面に下ろす。
「…生きていることに感謝するんだな」
そう言い残し、水間達に今後の作戦を伝える為に話し出す。
「俺は今からあの建物の中にいる隊長とやらに会いに行ってくる。お前達は待機していてくれ。」
クリスが言い終わり、水間達の方を見るとまだ震えているのが分かる。
先程のやり取りを見てまだ恐怖しているのが見てわかる。
マリアは嗚咽を漏らしており、大鳥と紫村は震えており、水間は絶句していた。
自分たちの目の前でこうも簡単に人が気絶させられ、それをこうも簡単に、まるでいつもと同じ感覚で行うクリスに対し、かなりの恐怖感を抱いていた。
クリスはそれを察し、落ち着いた声で話す。
「怖がらせてしまい申し訳ない…気付いていると思うがあれが俺の普段の生活、日常だ。いつも生死と隣り合わせで生きているからな…お前達とは少しズレているんだ。」
クリスの話を聞く彼らは恐怖を覚えつつも、その話を聞いている。
その様子を見てクリスは続けて言う。
「その…俺からは『慣れろ』としか言えん…お前達とは縁遠いが…いずれ何かしらの形でお前達にもこう言った災難は起こるはずだ。…遅かれ早かれ、こういった経験をするのはいい機会だと自分に言い聞かせていてくれ。」
クリスはそう言うとナイフを片手に持ち、水間達から建物へと目線を変える。
建物の周りをじっくり観察すると、どうやら見張りは居ないようで、あまりのも無防備な佇まいにクリスは不信感を覚える。
(正面から入るのはまず間違いなくアウトだろう…となると窓か抜け穴があればベストだが…窓は見つかりやすいからなるべく使いたくないな…安全な抜け穴があればいいがそう都合よくないだろうな。さてどうしたものか)
そんな様子を見ていた水間が幹から顔をだし、その建物を初めて視認する。
(あれ…あの建物見たことがあるような)
水間がじっくり観察すると、それは昨日燃やされた元・朴月の家であった。
念のために辺りを確認すると、所々の木が燃えたような焦げ跡があるのがわかる。
(燃え残ったのか…朴月さんに教えたら喜ぶかな…いや、今はそんな事より)
水間はクリスの方を向き、話しかける。
「クリスさん…俺、この建物知ってます。」
そう言うとクリスはバッとこちらに振り向き、「本当か!?」と問う。
水間は臆することなく話を続ける。
「はい、以前この建物が燃える前に入ったことがあります。ある程度は中の様子も覚えています。」
それを聞いたクリスは嬉々として水間に話しかける。
その嬉しそうな表情を見た水間は少し安心し、話を続ける。
「建物中にはいるんですよね?それだと正面や窓からの侵入は容易には行きません…なら抜け道を使えばいいんですよ!」
「抜け道ィ?そんなのあるのか?」
「はいあります。以前建物を訪れた時に、その抜け道を通りましたので…今は燃えていますが崩れてはいないのでその抜け道もきっとまだあります!」
「そうか、まぁそれにかけるしかないな。」
クリスは覚悟を決めたように立ち上がり、準備運動をはじめる。
「さてと…そんじゃ行ってくるか」
クリスはそう言うと水間が静止する。
「あの!抜け道は正面にある壁の下にあります!抜けた先は押し入れになります!気を付けてください!」
そう言うとクリスは笑顔で「おう!任せとけ!」と言うと気付かれないように建物へと近づいて行った。
「なんか…優しかったな」
紫村がそう言うと、周りのみんなはウンウンと頷いていた。
その場に残った4人はクリスの後ろ姿をただ眺めていた。
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クリスが建物の裏側につくと、水間に教えて貰った場所の付近を探る
(何かないか…俺の身の安全はこれにかかっていると言っても過言じゃないんだ…)
クリスの必死の探索の結果、 壁の1部の板が外れかかっているのが分かった。
それを剥がすとその先には人1人が通れるほどの穴が空いていた。
(なるほど、これは使える!)
クリスはその穴に入って行き、匍匐前進で進んで行った。
道は短く、直ぐに行き止まりとなった。
クリスはその行き止まりの壁を少し押すと、その壁は動き出しハラりと倒れた。
クリスはその先へと進み、押し入れと思われる空間に到達した。
(流石に暗いな…まずは明かりが先か)
ライターを取り出して火を灯す。
「…誰?」
奥の方から声が発しられ、驚いたクリスは声の方向へとナイフを向け照らす。
初めは分からなかったが、だんだんとライターの火がその声を発した人物を照らし出す。
一一一一そこには少女が縛られていた