日常
相変わらずの更新頻度です。
第二章 第1話「日常」お楽しみください
「ハァ…ハァ…」
深夜の山で、何者かが息を切らしながら走っている。
辛うじて人間だと分かるシルエット。
月明かりが照らす先には男が現れる。
「追え!逃すな!殺しても構わん!撃て、撃て!」
そう声が響くと、次の瞬間には銃を発砲する音が静かな山に響く。
「クソッ…!どうやら俺はとんでもない事に巻き込まれたようだ…」
男はポケットから一枚の写真を取り出す。
そこには1人の女性と男性が写っていた。
「ハァ…あなたは今、一体どんな世界で生きているんですか…浅葱さん…」
男は後ろからの追っ手に気付くと、さらに山を下って行った。
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翌日、いつもの朝を迎えた水間はいつも朝食を用意してくれているマリアに「おはよう」と挨拶をする。
そんな彼に彼女も「おはよう水間!」と元気に返事をする。
まるで昨日の出来事が嘘みたいな振る舞いをしている現状に、誰も疑問を抱かなかった。
そう、いつも通り。
いつも通りの朝を迎え、学校に向かう。
何も変わらない普段の日常…いや、ひとつだけ変化があった。
それはこのホームレスとも言える人間。朴月剣心が隣で一緒に歩いていることだ。
「やぁ水間殿!これから学び舎に向かうのか?」
「あぁ、その通りだよ」
昨日、別れ際に「次の拠点を見つける」などと言っていたのに大丈夫なのだろか…と水間は心配になりながら朴月と話していた。
「それにしても昨日は本当に助かりましたよ。改めて礼を言わせてもらいます。ありがとうございました」
「礼には及ばんよ。昨日も言った通り、奴に宿を燃やされて腹が立ったのは事実だからのう」
「ハハッ。それより、次の拠点…あっいや、宿は見つかったんですか?」
「あぁ、その事なんじゃがな。実は昨日の夜に直ぐ見つけることが出来たんじゃ。しかも仕事付きじゃ」
朴月は笑顔でそう答える。
よほど嬉しかったのだろうと察しがつく
「へぇ、住み込みですか。因みに場所はどこですか?」
「おぉ、近くの山にある神社じゃ」
そう言って、昨日襲われた山とは別の小さな山を指差した。
そこは学校から少し離れた場所に位置する神社だった。
「へぇ、あの神社ですか。良かったですね!」
「まぁの、今はあの神社で巫女の仕事をしておるぞ」
「………えっ!?」
「巫女」と聞いた瞬間、水間は驚嘆の声を上げた。
「け…剣心さんって、女性だったんですか!?」
「あぁ、そうじゃよ。言ってなかったっかのォ?」
「聞いてませんよ!僕はてっきり男性だと……」
「ハハッ!昔からよく勘違いされていたからのぅ!」
朴月は水間の反応が面白かったのか、笑いのツボにハマったようだった。
水間は騙されたようでショックを受けている。
「いやぁ、すまない。最近は私が女だと知った人の反応が面白くてな…ハハハッ!」
「…騙されました。俺のハートは砕け散りましたよ…」
そうこうして歩いていると後ろから「よう水間!」と声をかけられる。
2人が後ろを振り向くと、そこには紫村の姿があった。
紫村は朴月を見ると次は水間、その次は朴月…と交互に目をやった。
「水間殿のご友人か?私は朴月剣心だ。彼とは昨日の夜に知り合っている」
「ふーん…俺は紫村友則ってんだ!一応コイツの親友だ!よろしくな剣心!」
紫村は握手を交わそうと手を差し伸べる
朴月はそれを受け取り、彼らは握手を交わす
「あぁ、よろしくたのむ…!因みにだが私は女だ。男じゃないぞ」
「えっ!?」
それを聞いた紫村は取り乱す。
水間はその光景を見ると(確かにおもしろいな)と心で思い、笑った。
そんな感じで楽しく歩いていると目の前た水間達が通う高等学校【第一黄昏高等学校】か見えてきた。
「おぉ、見えてきたな。それじゃあ私はこの辺で神社に戻るとしよう。いつでもいるから会いにきてくれて良いぞ!」
そう言い残して、朴月は神社の方へと歩いていった。
「今日はちゃんと学校あるな!」
「あぁ、そうだな…」
そんな冗談を交わしながら彼らは無事登校したのであった。