表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の世界  作者: 珈琲もか
第1章:始まりと戦い。
5/27

お礼と驚き

机の下に隠れてからしばらく経った時、母が階段を上ってくる音が聞こえた。

部屋に向かって歩いてくる。きっと何かを言われるんだ。また泣いてしまう。

そう思うと気持ちが重くなった。体育すわりをしている膝に顔を埋める。


堪えないと。泣かないように。


急にまぶたの裏が明るくなった。驚いて顔を上げると、机の下の空間を塞いでいた椅子がどかされていた。母だ。


怖くて母の顔を見られず、机の下で縮こまっていた私の前に、母の顔がひょこりと現れる。目をそらそうとした瞬間、母の表情を見た私は、動きを止めた。

笑っていた。

久しぶりに見た、母の笑顔だった。

嬉しかった、のだが。

どうして笑っているのか分からなかった。 また何か、耳を塞ぎたくなるようなことを言われるのだとばかり思っていたのだ。


「ありがとう、はるな」


え・・・・・?


なんのことか分からなかった。色々と叱られるだろうとは思っていたが、お礼を言われるなんて思ってもみなかった。


「あ、はい。」


よく分からなかったので、妙な返事になってしまった。あまりに分からなかったので、他に何も言えなかったのだ。

多分その分からないオーラが私の体から出ていたのだろう、母が吹き出した。


「ねえ、あなたどうしてお礼を言われてるのか分かってないんでしょう?」


他にどうしようもないので頷く。

そんな私に母は丁寧に説明してくれた。


私が思っていた通り、戸山先生はとっくに母に連絡を入れていた。そしてこう言ったそうだ。

「もしもかさんがプリントを渡さなかったら、問い詰めてでも渡させてください。どちらにも辛い思いをさせてしまうとは思いますが、逃げてほしくないんです」


母は、私が絶対にプリントを渡さないだろうと思っていた。だから、問い詰めなければならないだろうと覚悟を決めて、重い気持ちで私の帰宅を待っていたのだ。


「だから、あなたがちゃんと渡してくれた時、とても嬉しかった。それに、信じてあげなかったことが申し訳なくなったの。ごめんね」


私は、なんとなく信じられた、ということが嬉しかった。そして、渡して良かったと初めて思えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ