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前編

猫が鳴いた。庭に住み着いた黒猫だ。僕は話しかける。

お前、何が言いたいんだ。

猫は空を見上げた。自らの体毛と同じ色の空に、何をまちがえたのか太陽からの貰い物で精一杯存在証明する月を見つめる。

ー月を見る猫。

お前、何が….…。

言いかけて口を閉ざす。今日は冷える。

僕は庭に面した窓のカーテンを閉ざして静かに床についた。午前二時。昼間はがやがやと騒がしい街も、息を潜める時間帯。

そういえば、カーテンを閉ざす瞬間目の端に写ったあの白い影は一体なんだったのだろう。

気になったがやはり眠い。今日もあくびが出るほど平凡な毎日が待っているんだ。少しでも体力を回復させねば。

寝よう。

僕は闇に溶け込むように眠りに落ちた。


翌朝。午前六時ちょうどに目が覚める。正確には強制的に覚醒させられた。携帯が初期設定のままでメールが届いたことを知らせている。差出人のみを光放つディスプレイで確認して放置。お前も人間に好き勝手使われて健気だな。

そういう自分も便利に扱う人間の一人だ。

やがて静かになる。確か初期設定では一分で音が止まるはずだ。つまり今は六時一分。

まだ二十九分は寝れるな。

俺は再び目を閉じたその時、先ほどとは少し変わった相変わらず初期設定の着信音が鳴り響いた。

全く。

俺はかけてきた相手が誰か確認せず電話にでた。もはや分かり切っていることだ。

「もしもし」

『よお! いい朝だねぇ』

「全くもって清々しいねー、お前を殴ることができたならな」

俺は目一杯の怒りを込めて言い放った。

『いやぁんドSねぇ。で、そんなことよりさぁ、今お前ん家の前なんだけど』

それがなんだというんだ。

俺は今すぐにでも携帯を握り潰したい気分に襲われるがなんとか押し殺した。

『学校行こうぜ』

「拒否しよう」

『いやぁん連れないわねぇ』

ふと気配を感じて昨夜猫を見ていた窓を振り返る。同時にノックの音。

「『迎えにきてやったぜ』」

「誰もお前の迎えなど待っていない」

俺は通話を強制終了させた。

「いやぁん、俺このままじゃ次のテスト赤点とっちゃうよぉ」

やはりそれか。どうせそんなところだと思った。

こいつは三歩歩けば忘れるような見事な鳥頭の持ち主だ。もうすぐ二学期末テストがあり、それで赤点取ると夏休みの始め一週間補修を受けさせられる。それがどうしても嫌なのだろう。

「お願いします!!」

うるさい。しかしこのまま引き下がるようなやつでないことは長年の付き合いで知っている。

「新作アイス……」

「そして?」

「バッティングセンターそっちのおごりで付き合え。それで勘弁してやる」

窓の向こうで歓声が発せられる。

全く俺も安く買収されたものだ。

自分の人のよさに飽きれながらもだらだらと制服に着替え始めた。


それからテストまで毎日朝早く奴のモーニングコールで起こされ学校に行き勉強を教えた。

おかげで俺は毎日不機嫌かつ奴は上機嫌そして勉強ができるようになったとはしゃぎなんとか赤点も免れたようだ。


これもテスト前のいつもの出来事。なんの変哲もないクラスメイトとのやり取り。俺は相変わらずクラス一位で、奴は赤点をギリギリで回避して、そして長い休みに入る。

帰宅部というなんとも有意義な部活動に順次している俺は、来る日も来る日も宿題をしてゲームをしてたまに誰かと遊んで、そんな退屈な日々を送る。対して奴はサッカー部というなんとも鬼畜な部のエースなので来る日も来る日も練習に打ち込む充実した日々を過ごすのだろう。補修を受けたくないのも練習に参加できなくなるから。そしてまた、夏休み終盤になると宿題を移しに我が家にやってきて俺は拒否するも買収され見せる羽目になる。

在り来たり、平凡、ノーマル、オーソドックス……。

何故人々は飽きがこないのか不思議になるほどの日々に、俺いつから退屈していたのだろう。もうそれすら忘れてしまったようだ。


校長の希望論を聞かされ、口パクすらせずにただ校歌を聞き流し、ピアノの音に合わせて礼をする。何でもない終業式が終わって生徒の気持ちの波は最高潮へと達する。

何しよう、何処行こう、そんなきゃぴきゃぴした女子の声。部活辛い、選手決めある、合宿だ、そんな運動部員。少数派だが作品の話などをする文化部員。

俺はそんな声のアーチを潜り抜けて帰路についた。


さぁ退屈な日々の延長線が始まるぞ。つまらない休みに備えて新作のゲームでも漁ろうか。バイトでも探そうか。

いや、面倒だ。退屈にも良い加減慣れたし、わざわざ面倒なことをする筋合いもない。家帰って寝よう。明日のことは明日考えよう。

つまらない、変わらない日々。俺は足元の石を蹴飛ばした。

空しい音を立てて地面を転がり、やがて止まる。そのすぐ側に、薄汚れたコンクリートにはそぐわない真っ白で美しいサンダルと、そこに収まるこれまた血の気のない透けるような白色をした脚があった。俺は視線を石から離し徐々に上へ向けた。

目が合う。

「ー移り香は如何ですか」

それは僕の単調な日々に終わりを告げる金の音だった。

あらすじではたいそうなこと言っておきながら内容は支離滅裂な頭に浮かんだことを書きなぐっただけのもの。読みづらかったかもしれませんがここまできていただきありがとうございます。

やっと完結出来る短編が書けるかと少し嬉しかったり。


ではまた、次のお話で。


2013年 2月6日 春風 優華

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