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3-最悪な幕開け

恐る恐る前を見てみる。

すると僕に大勢の注目が集まっているのだ。

僕はこのときにピークを迎えてしまったのか、

とうとう泣きだしてしまった。

耐えられなかった。

決して教室のすべての人が僕を見ていたわけでも、

ましてや聞き逃すまいと、注目していたわけでもない。

けれど初めて浴びる大勢の視線に、僕は無力だった。


「おい、相田? どうした?」


泣いていてまともな言葉が出ないし、

しゃべれるはずがない。

担任の先生はそれを察したようで、


「あぁ、次だ。相田は席に戻れ」と、キレ気味に言われた。


僕はこのとき、夢見ていた学校生活を最悪の形で幕開けしたに違いない。

泣きながらも、やっとのことで自分の席に戻った僕は、

後ろのホストさんが自己紹介をしていることに気がついた。

緊張した様子など微塵も見せずに、むしろ余裕の微笑み加減を維持し、

自分の名前、出身、趣味、夢など、慣れたように次々と出てくるではないか。

(彼の名前が「井原 大河 イハラタイガ」ということはこのとき知る)

僕のただ泣くことしかできなかった自己紹介とは、まさに天と地の差だろう。

いや、同じ秤で比べるのもおこがましいに違いない。

そんな彼も言うこともなくなったのか、最後に


「これからよろしくお願いします」


と、一礼するとクラス中から割れんばかりの拍手が起こる。

そしてみな、拍手しながら口々に彼を称賛していた。

拍手が鳴り止む中、彼はまだ余裕の微笑みを残し自分の席へと戻っていく。

僕はこのとき彼のような人間がとても輝いて見え、そしてとても羨ましくも思えた。

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