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1-宣告と思い出

天国なんてないと思う。

もちろん地獄なんてのも。


僕は今日、余命半年と宣告された。

慣れ親しんだ医者の俯いた顔。

それを聞いて泣く、優しい両親。

本当なら僕も泣くべきなのだろうが

ただそれでも僕は"あの人"のことしか頭にない。


"あの人"に何て言えばいいのだろう。

"あの人"はこれを聞いたらどう思うのだろうか。

"あの人"は悲しむのだろうか。


そんなことばかり考えていた。



僕は生まれつき体が弱い。

よく入退院を繰り返していた。

医者が言うには頭の病気だそうだ。

ただ、幼い僕にはそれがなんなのかわからない。

両親はいつも心配そうに僕に付きっきりで

そうしていつも涙交じりに


「ごめんねごめんね」と言う。


僕にはそれが当たり前だったので


「大丈夫だよ」と返していた。


入院生活が多いせいか、医者や看護婦さんとも

顔馴染みになっていった。

ゴリラのような顔立ちで、しゃべるのが遅い細田先生。

顔立ちのよい、綺麗なお姉さん看護婦の蒲田さん。

入院中、細田先生や蒲田さんはいつも僕に外のことを教えてくれた。

僕は病院にいるか家にいるかなので、外というのがわからない。

もっぱら父親が持ってくる漫画や小説。

あとはテレビなど、そのくらいからしか情報がない。

学校にも通えないので通信教育で母親に教わりながら勉強した。

そのような生活が15歳になるまで続く。


けれど幾度の入院のおかげか、

今の学校に入る前頃には通院するだけで、

入退院を繰り返した昔よりは病気も良くなっていたのだろう。

だから細田先生の許可もあり、今の学校に入ることになる。

両親もすごく喜んだ。


「やっと普通の子のような生活を送らせてあげられる」と。


そう、僕もすごく嬉しかった。

学校など、漫画やテレビだけの世界。

とても憧れの場所だったのだ。

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