第7話「観測者」
爆発音が止み、白い霧がゆっくりと流れていく。
さっきまでの戦闘が嘘のように、周囲は静まり返っていた。
崩れた建物、えぐれた地面、焼け焦げた空気。
サーシャはその場に立ったまま、ゆっくりと息を吐く。
呼吸が重い。体もまだ痺れている。
それでも――立っている。
「……終わったか」
マルレインが肩を回しながら言う。
だがサーシャは答えない。ただ、周囲を見ている。
違和感。
何かが引っかかる。
「……いや」
サーシャは小さく呟く。
「まだ、終わってない」
マルレインが眉をひそめる。
「は?」
サーシャは地面を見る。
崩れたはずの場所。爆発で吹き飛んだはずの残骸。
だが――それが、消えている。
「……おかしい」
「何がだよ」
「残ってない」
サーシャの声が低くなる。
「破壊したはずの“残骸”が、ない」
マルレインが周囲を見回す。
確かに普通なら、もっと散らばっているはずだ。
だが今は――綺麗すぎる。まるで、“回収された”みたいに。
「……誰かが処理してる?」
マルレインの声に、わずかな緊張が混じる。
サーシャは空を見上げるが、そこには何もない。
だが――“見られている気がする”。
その瞬間!!
ジジ……ッ
ノイズが走り空気が一瞬だけ歪み、視界の端に何かが映る。
白い長い髪。
人の形、そう女の姿が一瞬だけ見え、次の瞬間には、消える。
「……今の」
サーシャの目がわずかに見開く。
マルレインが振り向く。
「何か見えたか?」
サーシャは答えない。
確信が持てないからだ。
だが――“あれは敵じゃない”もっと別の、“この場に存在しない何か”だ。
その時、どこからともなく声が響く。
「――観測完了」
冷たく美しい、だが感情がない声が。
空気が、一瞬で変わりサーシャの背中に、ぞくりとした感覚が走る。
「……誰だ」
返事はない。
ただ――“見られている”確実に。
暗い空間に無数のモニター、その中心に“それ”は静かに立ち、瞳だけが淡く光る。
「……非効率」
わずかに首が傾く。
「……修正する」
その瞬間――どこかで何かが変わる。
サーシャが顔を上げる。
サーシャは嫌な予感を感じ、言葉にできない“異常”な感覚が頭の中で過ぎる。
「……来る」
サーシャは小さく呟く。
マルレインが笑い「まだあんのかよ、この後に」と言う。
だが、その笑いは決して軽くなく理解している、“次は違う”と。
サーシャの瞳が、静かに細められる。
「……終わってない」
空を見上げる。
何もないはずの空。
だが――そこに“何か”がいるというそんな確信だけが、残る。
戦いは、まだ続く。




