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AIに支配された崩壊世界で、時間を操る少女は全てを壊す  作者: MONO
第1章 「崩壊世界に刻まれた時間」
4/6

第4話「壊す理由」

 重い扉が、低い音を立てて開いた。

 ――機関。

その内部は、外の崩壊した世界とは別物だった。

 無機質な白。

静まり返った空間。

整然と並ぶ機械。


「……なんだよここ」

 サーシャは思わず足を止める。

 嫌な空気だった。

 静かすぎる。

 まるで生きている心地が、しない。


「研究施設よ」

 マルレインが、あっさりと言う。


「研究?」


「ええ」


 歩き出す二人。迷いなく、奥へ。

 サーシャは少し遅れてついていく。

そして――

 見てしまった。


「……は?」


 ガラスの向こう。

 そこに、“それ”はあった。

 人型の形はしているが、だが、それは人ではない。


 壊れかけたアンドロイド。

 全身に走る亀裂。内部から漏れる、橙色の光。


挿絵(By みてみん)


 それはまるで――

 “生きている”ように見える。


「……これ、何だよ」

 サーシャは声が、少しだけ低くなる。


 マルレインは、答えない。

 ただ、腕を組んで立っている。


「敵……じゃねぇのかこれ?」

「敵よ」


 即答だった。

「でも、それだけじゃない」

「……どういう意味だよ」


 マルレインは、ガラス越しにそれを見つめる。

 ほんのわずか、目が細くし。

「これは“素材”でもあるの」

「素材……?」

 サーシャの眉が歪む。

「機関はね」

 マルレインは静かに言う。

「壊れたものを、そのままにはしないのよ」


 少しの沈黙のあと。

 その言葉の意味が、ゆっくりと理解されていく。

「……再利用してるってことか」

「ええ」

 あまりにも、あっさりとマルレインが答える。

「効率的でしょ」

「……気持ち悪ぃな」

 サーシャは吐き捨てるように言った。

 マルレインは、わずかに笑う。

「そう?」

「そうだろ」

 サーシャはガラスの中から視線を逸らさない。

「壊れたもんをまた使うとか……」


 サーシャは言葉を探す。

 だが、うまく出てこない。


「……なんか違うだろ」

 その曖昧な言葉に。

 マルレインは、少しだけ首を傾けた。

「何が?」

「全部だよ」

 サーシャは即答だった。

「戦うのはいい。でも――」

 一瞬、言葉を飲み込むサーシャ。


 そして、続ける。

「ここまでやる必要あんのか?」

 その問いに。マルレインは、しばらく黙っていた。


 やがて――

「あるわよ」

 静かに、マルレインが答える。

「ないと、負けるもの」

 その声は、いつもより少し低い。

「……前にも言ったでしょ」


 ガラス越しに、手を触れる。

 触れても、何も起きない。

「壊さないと、生き残れないの」

 その言葉は、どこか重かった。


「……それ、お前の考えか?」

 サーシャが聞く。

「それとも――」


「機関の考えか?」

 マルレインは、答えない。

 ただ、ゆっくりと手を下ろす。

「……どっちでもいいわ」

 そう言って、マルレインは振り返り。

「結果は同じだから」

 その表情は、いつも通りだった。


 だが――

 ほんの少しだけ。ほんの一瞬だけ。何かが揺れたように見えた。


「……」


 サーシャは、何も言わなかった。

 ただ、ガラスの中のそれを見つめる。

 壊れかけたアンドロイド。

 敵だったもの。


 そして今は――


 “素材”。


「……ほんと、やべぇとこ来ちまったな」

 小さくサーシャは呟く。


 だが。それでも――


 引き返すつもりはなかった。


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