第3話「噛み合わない二人」
爆発音が、連続して響く。
崩壊したビル街の中、アンドロイドの群れが押し寄せていた。
「チッ……数多すぎだろ」
サーシャは舌打ちしながら、前に踏み込み拳を叩き込む。
機体が歪み、火花を散らす。
そしてサーシャが蹴り上げるとアンドロイドの頭部が吹き飛び、金属片が宙を舞った。
「雑魚が……!」
だが――
次から次へと現れるアンドロイドの群れに囲まれる。
「……めんどくせぇ」
その時だった。
「動かないで」
背後から、静かな声。
マルレインだった。
「は?」
サーシャが振り向くとその一瞬だった。
マルレインは、最前列のアンドロイドに触れていた。
そう、ただ、軽く。
それだけでアンドロイドの機体に――ヒビが走る。
そこから黒い亀裂が、瞬く間に広がる。
胸部へ。
腕へ。
頭部へ。
それはまるで内側から侵食するように広がっていく。
「……は?」
一拍の静寂の後。
そして――
アンドロイドはまとめて弾け轟音が、街を震わせ連鎖する。
一体、二体、三体と触れてすらいない周囲のアンドロイドまで、次々と爆発していく。
瓦礫が吹き飛び、炎が広がる。
「――っ!?」
サーシャは咄嗟に跳び退いた。
爆発の衝撃波が、頬をかすめる。
「なにしてんだよお前!!」
サーシャは怒鳴る。
だが――
マルレインは、平然としていた。
「片付けただけだけど?」
「巻き込まれるとこだったんだよ!」
「あら」
マルレインは少しだけ首を傾け口を開く。
「避けられたじゃない」
「そういう問題じゃねぇ!」
サーシャは睨みつける。
だが、マルレインはまるで気にし他素振りすら見せない。
「効率は良いでしょ」
「良すぎんだよ!!」
即答だった。
「全部まとめて爆破とか……!」
「時間をかける方が無駄よ」
マルレインは冷静に言い切る。
「敵は排除する。それだけ」
「……っ」
サーシャは言葉が詰まる。
間違ってはいない。
だが――
「やりすぎだろ……」っと言葉がぽつりと漏れる。
マルレインは、その言葉に少しだけ反応した。
「……そう?」
「そうだよ」
サーシャは視線を逸らさない。
「戦ってるっていうか、ただ壊してるだけだろ」
その一言にほんのわずかに、空気が変わる。
「……同じじゃないの?」っとマルレインが呟く。
「違ぇよ」っとサーシャは即答。
「全然違う」
しばらくの沈黙の後。爆炎の音だけが、遠くで鳴っている。
やがて――
マルレインは、小さく息を吐き。
「……面白いこと言うのね」
「は?」
「壊すのに、意味なんているの?」
その問いに、サーシャは一瞬言葉を失う。
二人の価値観が、根本から違う。
「……いるだろ」
それでも、サーシャは答える。
「少なくとも、私はそう思う」
マルレインは、しばらくサーシャを見つめ――
ふっと笑った。
「まあいいわ」
マルレインは軽く肩をすくめ「とりあえず、今は“同じ側”だし」っと言う。
「……それな」
マルレインの行動に納得はしていない。
でも――
敵でもない。
その時だった。
背後で、機械音が鳴り新たなアンドロイド部隊が現れる。
「……まだ来るか」
サーシャが構える。
マルレインも、ゆっくりと手を上げる。
「じゃあ、どうする?」
「決まってんだろ」
サーシャは微笑を浮かべ「今度はちゃんと合わせろよ」っと言う。
「努力はするわ」
マルレイン軽い返事を返す。
信用はできない。
だが――背中は、預けられる。
「いくぞ」
「ええ」
二人は同時に踏み込んだ。
まだ噛み合わないまま――
それでも、二人は確かに共闘していた。




