#1
ぼくはちゃんと分かっているんだ。
これは夢のなかの森。だって、青い木に青いコケ、青いミツバチだなんて、ウソっぱちに決まっている。
青いチョウチョや小鳥なら、前にも見たことがある。
晴れた空が青いのはあたりまえだし、晴れた空をうつしだした水たまりが青いのもあたりまえ。
だけど、それにしたってこの森には青いものしかない。この世界には青いものしかない。どこを見ても、なにを見ても、ただただ青。青だらけ。
青い太陽をおいかけて青いこみちをぬけると、あたりいちめんに青い原っぱのけしきが広がった。
青いくさばなが、風にふかれて右へ左へそよめいている。
(これは夢にちがいない)
ぼくはいつもみたいに、わざと目をパチクリさせた。すると、ベッドのなかでハッと目がさめた。
(ほらね! やっぱり夢だった)
カーテンをあけると、お日さまの光が部屋のなかにさしこんできた。
大急ぎでくつ下をはいて、「おはよう!」と言いながらかいだんをかけおりる。
リビングもキッチンもシーンとしている。ママとパパは、朝ねぼうなぼくをおいて畑仕事に出たんだろう。
ジャムトーストを二まい食べてきがえたら、さあしゅっぱつ。
げんかんでおろしたての青いながぐつをはいて外へ出ると、犬小屋のなかからこたろうが元気よくとび出してきた。
「おはよう! こたろう」
たるんだほっぺたをらんぼうになでて、首のチェーンをはずしてやる。しっぽの先が顔にバシバシと当たる。
「ちょっと! おちついてよ!」
ぼくは笑いながら、こたろうの大きな頭をぽんぽんとなでた。
次回へ続く




