7
◇
「言えましたね」
アパートへ帰る途中、カゴがひとりごちる。タカシは強く頷き「今度は大家さんだ」と拳を握った。
「大家さんにも、宇宙人だってバレてる可能性はありますよね?」
「いや、そんなはずは……だって、あんなによくしてくれたんだ。近所の人も、アパートの人も……」
「こんな銀色の生物と、なんの偏見もなく仲良くしてくれると思うかい?」と疑心暗鬼のタカシに言われ、カンマは腕を組み首を傾げた。
「僕らは難なく受け入れちゃったからなぁ」
「まぁ、仕事のおかげで変なものは見慣れてるし。多少はな……」
「お二人の感想はあてになりません」とタカシが肩を落とした。
*
「あら、知ってたわよ?」
大家とばったり遭遇した帰り道。
タカシが意を決して放った「実は宇宙人です」という言葉を一刀両断した大家に、カンマとカゴは思わず堪えていた笑いを漏らした。
ショックを隠しきれていないタカシは何度も「冗談ですよね?」と聞いたが、大家はおおらかな笑みで「最初から銀色のぷにぷにしたお顔だったじゃない。すごくびっくりしたけど……今では、愛嬌があっていいわね」と返す。
タカシは肩を震わせ「僕の擬態は……ことごとく失敗していたのか……」と嘆いた。
「あら、変身してたつもりだったのね。ふふ、おっちょこちょいさん」
大家は口元に手を添えて、やさしく笑った。
その様子を見て、タカシは照れたように肩をすくめた。
「……怖いとか、そういうのは……」
「うーん、最初は驚いたわよ? でも、あなたはとても良い人じゃない。電球を変えてくれたり、重い荷物を持ってくれたり……だから、そんな第一印象なんかとっくの昔に消え去ったわ」
「うちの息子や孫なんかよりずっと良い子よ、あなたは」としわを深くした大家に、タカシは照れたように肩を竦めた。
「……最初から僕が宇宙人だと知っていたのに、よくしてくれてありがとうございました」
タカシが深々と頭を下げる。大家は胸の辺りで両手を大袈裟に振った。
「やめてよ、タカシくん。そんなふうに改まって。あ、そうだわ。さっきお饅頭をいただいたのよ。食べていかない? タカシくん、お饅頭好き? 後ろのお二人は? さぁ、上がって。お茶も出すわ」
大家が家へ招き入れようとした。「お饅頭、好きです」と言いかけたカンマを、カゴが手で制する。タカシは首を横に振り、また俯く。
「ありがとうございます、大家さん。でも……僕、もう行かなきゃいけないんです」
「あら、どこか遊びに行くのかしら? 楽しんできてね」
「いえ、もう……住んでる星に、帰らなきゃいけなくて」
「あら、そうなの?」と大家は悲しそうな顔を浮かべる。そしてすぐ、ぱたぱたと家の中へ戻っていった。しばらくして、レジ袋を提げて戻ってくる。
「これ、帰る途中に食べてちょうだい」
大家が朗らかに微笑んだ。タカシは一瞬戸惑ったように固まったが、ゆっくりと袋を受け取る。




