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目の前に現れた宇宙人に悲鳴も上げられないほど驚いているのか、とカンマとカゴは目を見合わせた。
やがてリュウノスケはポツリと呟いた。
「知ってたけど」
「え!?」
三人の声がぴったり重なる。
一番驚いているのはもちろん、タカシであった。
「どういう意味!?」
「え、だって。ずっと宇宙人のままだったよ?」
タカシはふらりと足を縺れさせた。倒れぬようにとカゴが彼の背中を支える。
「つまり……擬態していたと思ってたけど、できていなかったってことか」
カゴの言葉に、タカシがゆっくりと振り返る。その目は今にも泣き出しそうである。
「僕はずっと、宇宙人のまま地球を闊歩していたんですね……?」
「……そういうことに、なりますね」
「ウケる」
カンマがプッと吹き出すように笑った。カゴがギロリとカンマを睨みつける。
ショックを受けているタカシを弄るのは、御法度に思えたからだ。
「リュウノスケくん」
「なに?」
「……宇宙人を見て、怖くなかったの?」
タカシは震える声でリュウノスケに問うた。リュウノスケは「うーん」と唸ったあと、口を開く。
「正直ね、最初はすごく怖かったよ。だって、銀色だし、頭が大きいし。目もぎょろっとしてて、カメレオンみたいだし」
「……じゃあ、どうして声をかけてくれたの?」
リュウノスケはタカシを真っすぐ見つめて言った。
「寂しそうにベンチに座ってるタカシくんを見たら、放っておけなかったんだ」
その目が、静かに細まる。
「優しいね、君は」
「そんなことないよ」
リュウノスケが笑う。白く小さい歯が、とても眩しく見えた。
「今日も、サッカーやりにきたんでしょ? 行こう?」
リュウノスケがタカシの手を引こうとする。
だが、タカシはその手をそっと制した。「僕はもう、一緒に遊べないんだ」と沈んだ声を漏らした。
「どうして?」
「星に……帰らなきゃいけないから」
タカシが空を指差す。リュウノスケは「えぇっ」と悲しげな表情を浮かべた。
「帰っちゃうの? やだよ、寂しいよ」
「僕も、君と一緒にいたい。でも……仕方がないことなんだ」
「そっか……」とリュウノスケが涙ぐんだ目元を拭う。そんな彼の肩に、タカシが手を置いた。
「……ありがとう。宇宙人の僕と、仲良くしてくれて。すごく嬉しかったよ」
「こっちこそ、サッカーを一緒にしてくれてありがとう」
声の端々を震わせ、リュウノスケは言葉を紡いだ。
「元気でね、リュウノスケくん」
「うん、タカシくんもね」
「じゃあ」と手を振り、タカシが踵を返す。カンマとカゴは彼を見つめ「言い残したことはありませんか?」と言った。彼は首を横に振り「これ以上ここにいると、帰りたくなくなってしまうから」と無理に笑顔を作る。
「タカシくん!」
背中に声が届き、三人が振り返る。
そこには、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたリュウノスケがいた。
「また、サッカーしようよ。今度は、君が住んでる星で!」
「……うん! 約束だよ!」
リュウノスケの姿が見えなくなるまで、タカシは何度も振り返り、手を振った。




